太陽神の嫁 ~琉球沖縄の伝説

2010年12月10日

Posted by 横浜のトシ(爲井) at 20:20│Comments(4)琉球沖縄の伝説・沖縄先島編

みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第59話。


太陽神(たいようしん)(よめ)



 この(はなし)は、宮古(みやこ)伊良部島(いらぶじま)で、ずっと(むかし)から(かた)()がれてきました。
 比屋地(ぴゃーず)(かみ)はとても綺麗(きれい)であり、それはそれは美人(びじん)だったそうです。そのため太陽(たいよう)(かみ)自分(じぶん)(つま)()しがったそうです。
 ()()のこと、その美人(びじん)(あさ)便所(べんじょ)(すわ)っていたところ、太陽(たいよう)(かみ)()のように(ひかり)()()んできて妊娠(にんしん)したそうです。
 すると(いえ)長男(ちょうなん)である(あに)は、結婚(けっこん)もしていないのに妊娠(にんしん)するとは(なん)てふしだらな(おんな)かと(おこ)り出し、(いもうと)()かって言うことには、
 「お(まえ)など、何処(どこ)かへ()ってしまえ。(ちち)(かお)()らない()身籠(みご)もるなど、一族(いちぞく)(はじ)だ。(いま)()()()け。お(まえ)のようなやつには(なに)もやらない。」と()うなり、(いえ)()()してしまったのでした。
 それを見ていた二番目(にばんめ)(あに)()()けてきて、(いもうと)(やさ)しく()うことには、
 「身重(みおも)のお(まえ)一人(ひとり)()らすなど、出来(でき)(はず)がない。(わたし)一緒(いっしょ)()ってお(まえ)(たす)けるから(なに)心配(しんぱい)することはない。」と、そう()って、ついて来ました。
 その(あに)は、茅葺(かやぶ)きの(いえ)(つく)(はじ)めました。そして、まだ屋根(やね)(かや)()せないうちに、子どもが()まれたそうです。
 それでも無事(ぶじ)に子どもは生まれ、兄妹(きょうだい)二人(ふたり)はとても(よろこ)びました。
 そして、()まれて七日目の日、(てん)から綺麗(きれい)着物(きもの)美味(おい)しい御馳走(ごちそう)などが()ちて()たそうです。
 それで初めて二人は、この子が天の神さまの子どもだったのだと理解(りかい)しました。
 生まれて十日目(とおかめ)にも、また御馳走(ごちそう)()ちて()ました。
 そういったことがずっと(つづ)いて、次の年の誕生日(たんじょうび)に、大層(たいそう)綺麗(きれい)(うま)が、同様(どうよう)綺麗(きれい)(ひと)()せて(にわ)()りて()たそうです。
 すると馬を見た子どもは、自分も馬に乗ると言って()かず、いくら(あぶ)ないからと言い聞かせても()るの一点張(いってんばり)りです。そして、少しだけのつもりで(うま)()せてみたところ、あっという()何処(どこ)かに()()られてしまいました。
 いくら(かみ)()とはいえ、(はは)がとても心配(しんぱい)したのは()うまでもありません。
 (つぎ)(とし)(おな)()のこと、子どもが(うま)()って(もど)ってきました。
 (はは)()うには、一番上(いちばんうえ)(あに)には(はなし)を少しも()いて(もら)えず、一方的(いっぽうてき)(いえ)()()されてしまい、二番目(にばんめ)(あに)()き今、(わたくし)には兄妹(きょうだい)がないも同然(どうぜん)です。(わたし)もまた一番上の(あに)をもはや兄とは(おも)っていません。
 ですから自分(じぶん)には、何処(どこ)かにいるはずの(おっと)と、あなたをおいて、身寄(みよ)りは(ほか)にありませんと()い、それから一緒(いっしょ)(うま)()ると、(てん)()がって()きました。
 親子(おやこ)二人(ふたり)(てん)(のぼ)ってみると、太陽(たいよう)(かみ)()っていました。
 そして言うことには、
 「お(まえ)は、(ちち)のない()ではない。(わたし)こそが(ちち)である。
 お前達(まえたち)伊良部島(いらぶじま)(あた)える。
 そこへ()りて行って、伊良部の土地(とち)(ぬし)として()らすがよい。」と。
 そして神は二人を島に()ろしたそうです。
 こうして、子ども(がみ)母神(ははがみ)として、二人は比屋地(ぴゃーず)(かみ)になったそうな。



※この話の参考とした話
沖縄県宮古郡伊良部町前里添~『沖縄の昔話』
沖縄先島・沖縄県平良市池間島~『池間島の民話・梗概』
同上~同上
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町池間添~『南島方言の記述的研究』
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町佐良浜~『日本神話と琉球』


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●伝承地
沖縄県宮古郡伊良部町前里添~比屋地(ひやあず)の神さまは、非常にきれいな美人だったそうだよ。そして、神さまからも欲しがられて、ここの人は太陽を神さまと祈っているから、朝起きて行って、便所に坐っているところに、神さまの太陽の手はこんなに出ているように見えるから、それが、あの人の口に出しているようにしていたそうだよ。それで、だれをも夫にしていないのに、妊娠したそうだ。
 妊娠しているから、家の大きい兄さんは、
 「お前はどこへでも行け。お父さんを知らない子をみごもっているから、出て行け。お前には、ものもあげられない」と怒って言ったそうだ。また、二番目の兄さんは、
 「お前一人で行っても暮らしができないから、うちが行って、お前を助ける」と言って、いっしょに出て行って、そこで家を作ったそうだよ。だが、家を作って--昔の家はこんなスラブでもないから--茅葺きの家を作って、まだ上に茅を載せないうちに、子どもが生まれたそうだ。もう出て来るという頃になって、家を作るようになったそうだが、子どもの神さまは、まだでき上がらない、半分作りしてある家に生まれたそうだ。
 生まれたから、きようだい 「もう子どもが生まれた」と兄妹(きょうだい)二人嬉しがっていたら、七日目の日に、天からきれいな着物やおいしいご馳走などが落ちて来たそうだ。--それはまあ話だから、ほんとうかどうか、どうも分からんが--落ちて来たから、
 「これはもう天の神さまの子どもだったらしい」と。--そうして、こっちの人は、生まれて十日(とか)にはご馳走するさ--十日にはまたご馳走が落ちて来たそうだ。それで、次の年の誕生には、大きいきれいな馬が、きれいな人を乗せて、きたない家ガマの庭に降りて来たそうだ。したら、あの子どもガマが、
 「うちもあの馬に乗る」と泣いてるさあ。「あれに乗せて、あれに乗せて」と泣いているから、
 「ああ、あんな怖(こわ)い馬に乗せては大変」と言っても、
 「いやいや、自分はこれに乗る」と。乗ってみたら、知らずのうちに連れて行って、そこにはいなくなったそうだよ。そして、お母さん神さんは心配しているさあ。心配していたら、また、次の年のその日に、その神さまはおいでになったそうだ。だから、もう自分を出した兄さんのことは思わないさ。自分の夫のほかはないから、天に上がって行ったそうだよ。親子二人で行ってみたら、天の神さまは、
 「お前は父のない子だが、わしが父だ。お前たちには、伊良部島の土地を渡すから、降りて行って、伊良部の土地の主(ぬし)をして暮らしなさい」と言って、また降ろしたそうだ。--だから、あの神を御願(おがん)しに行くときには、今は子ども神、今は母神と、あのユタにさ、それが憑(かか)っているそうだ。
 これは、ずうっと昔から続いている話だよ。(『沖縄の昔話』)
沖縄先島・沖縄県平良市池間島~美しい娘が、朝、便所に行くと、太陽が昇って、娘に手を入れた。娘が妊娠したので、長兄はててなし子は生ませないと家から追い出すが、次兄が家を建てて男の子を生ませた。その子が三、四歳の頃、海の魚を俎板で切っていると長兄の伯父が、その子の手を出させて指を切った。子は泣きながら鳥と化して飛んで行き、母の鳥とともにピァ--ズの神の子神と親神となった。(『池間島の民話・梗概』)
同上~美しい娘が嫁に行かないのに妊娠したので、兄たちが問いただすと、太陽が昇るとき、便所に行ったら、太陽の手が股にさし込んだと答えた。長兄が、家では生ませられないと、娘を家から出すと、次兄が迎えて、子を生ませた。子が五歳になったとぎ、長兄の伯父が、蛸を分けるのに、その子の手を切った。するとその子は白い鳥となって飛んで行った。その子の母は、これを聞いて悲しみ、後産を埋めた所で太陽に訴えると、白い鳥が飛んで来て、伊良部に渡って神となれと告げたので、母は目を閉じて伊良部へ渡り、ピァ--ズ御岳の神となった。(同上)
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町池間添~昔、伊良部村にミガという名の美しい娘がいたが、あまりに美しいので、他人に騙されないように、家から出さずにいた。その娘が、朝早く外で小便をしていると、太陽の光の手がさし込んで、子を生んだ。長兄は父なし子は家では生ませないと怒るが、次兄が家を建てて生ませてくれた。その子は美しい女の子で、成長すると、わたしは神の子だから比地屋に行くと言って去ってしまった。母も子の後を追って比地屋に行き、そこの神となった。母はミガ、子はマユミガと言われ、比地屋では猫が出て来ても、その猫はマユミガであると言って、フマユ、フマユとさえも言わないそうだ。(『南島方言の記述的研究』)
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町佐良浜~昔、女が朝便所としても使われる豚小屋で用便していると、朝昇ってぎた太陽の光が、人間の手のように差し込んで来て、女は妊娠した。女の兄は夫がないのに孕んだことを怒り、追い出してしまった。家を出された女が子を生み、食物に困っていると、天の神が親子のところに食物を降ろしてくれたので、子どもを育てることができた。その子が七歳になったとき、天から赤い馬がやってきて、その子を馬に乗せると、その馬はどこ知れずに走り去った。何日か後に、再びその赤馬が現れたので、母親もその馬に乗ると、その馬は伊良部長山のピヤ--ズ御岳についた。この母子二神を祀るのが、ピヤ--ズ御岳であるという。(『日本神話と琉球』)


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Girls168さん、はいさい、今日(ちゅう)拝(うが)なびら。

別に、定期試験や、入試ではないので、
よく理解しようとしなくて、
かまわないんです。

太陽や月や星と、人間が結婚する話、
動物と、人間が結婚する話は、
大昔から、
日本だけでなく、世界中にあるんです。

そして、ただ、それだけなんです。

しかも、今に伝わってくるまでの間、
伝説や民話の内容は、色々、変わってしまうのが常です。

Girls168さんの、おっしゃる通り、
こんな話があるんだ、でいいのです。

ミッキーや、ミニーや、プーさんのお話も、
これから生きていく子どもは、知っているべきですが、
同様に、
自分の故郷の、昔からのお話も、知っていて欲しい、
ただ、それだけのことなんです。

何故なら、
学校も、教育もない、ずっとずっと大昔から、
オジーやオバーから、孫に、
村の長老から、村の子ども達に、伝わってきた話が民話です。

消えてしまうには、もったいないと思うのです。

コメント、ありがとうございます。
では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年12月11日 19:59


こんにちは!

ご無沙汰していましたm(__)m

このお話はなんか..私には難しいお話に聞えてしまいました(。。;)
ちょっと正直「んっ?」と理解できない自分が恥ずかしいですが..
でも、こんなお話もあったんですねっ!

コレまた初めて聞きました(゜゜ )
Posted by Girls168Girls168 at 2010年12月11日 15:07


スーさん、はいさい、今日(ちゅう)拝(うが)なびら。

太陽神も太陽も、
特に農耕国家では、でーじ重要です。

太陽や水がないと、育たないですから。

ただ、太陽は、
男性神、女性神、両性(というより性別が無い)場合など、
色々と違うので、注意が必要。

僕も、時々、間違えちゃいます。


スーミーって、何だったっけ?

沖縄方言事典で検索。
①横目 ②盗み見る

①なら問題ありません。斜めでも、上からでも、どこからでもOK!
②・・・・・・盗む?・・・・・・。ドロボ~。
盗んだもの、返さなくていいから、いつか鶴の恩返しを!(笑)
Posted by 横浜のtoshi at 2010年12月11日 07:30


今晩は(^^)

太陽神は、興味深いですよね。
いろいろ考えさせられます。
いつもスーミーでごめんなさい。
Posted by スーさん at 2010年12月11日 00:25


コメント以外の目的が急増し、承認後、受け付ける設定に変更致しました。今しばらくお待ち下さい。

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