世果報の神とサン ~琉球沖縄の伝説
みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~
奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第55話。
世果報の神とサン
昔の物忌みについて、竹富島で私達が幼い頃に、お爺さんや、お婆さんから聞いた話をしてみることにしましょう。
むかし昔、アーレーという人がおりました。
ある夜のこと、夜釣りのため海に出ていました。そこに世果報の神が、海の彼方からやって来て聞くことには、
「もしもし。私は島へ入る入り口を知らないんですが、どこが入り口なのでしょうか。どうぞ教えて下さい。」と。
そこでアーレーが聞くことには、
「失礼ながら、あなたは一体、どういう方なのでしょうか。」と。
「私は、海からやって来た世果報の神です。農作物を豊かに実らせたり、逆に実らさなかったりするのが私の役目です。
どうか、島への入口を教えて下さい。」と。
そこで、アーレーが言うことには、
「アーレー口という場所がございます。このアーレー口は私がいつも使う場所で、そこから行くと岩礁に引っ掛からずに海を往復出来ます。」と。
世果報の神は言うことには、
「どうやら、ここからそこに行けば、無事に島に到着出来そうです。」と。
アーレーが言うことには、
「着くことが出来る筈です。」と答えて、続けて尋ねることには、
「あなたさまは世果報の神、つまり、豊作を司る神でいらっしゃいます。私の畑を豊作にしていただけないでしょうか。」と、頼んでみることにしました。
すると神が言うことには、
「あなたは親切に島にゆく方法を教えてくれたので、いいでしょう。
それでは、ご自分の畑にサンを結んで立てて、私が分かるように印を付けておきなさい。」と。
そこでアーレーは、島に帰ると直ぐに薄を取って来てサンを結び、島の全ての畑に立てました。すると島中の畑が豊作になり、海から来た世果報の神は、約束を果たしてくださったのでした。
そこでアーレーは、世果報の神との経緯を、村のみんなにも話しました。
そしてそれからは、物忌みの時には村から三人が選ばれて、全ての畑を回ってスバを結んで立てました。スバは世果報の神との約束の印でもあり、全ての畑はいつも豊作になったそうです。
なおこの行事は、五十年ほど前までずっとこの島で行なわれてきました。私が二十代まで、この物忌みの行事は盛大に行なわれていたものの、今では廃止されて、なくなってしまったそうな。
※この話の参考とした話
①沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『竹富島・小浜島の昔話』
②沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『蟷螂の斧』
Copyright (C) 横浜のtoshi All Rights Reserved.
●伝承地
①沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~昔の物忌みのことを、私たちが小さいときに、お爺さん、お婆さんから聞いた話をしましょう。
ええ、昔、アーレーという人が、夜釣りをしようと出かけていると、世果報の神が海からやって来て、
「もしもし、どこが入口か、(島へ入る)入口を知らないんだが、入口を教えてくれ」と、おっしゃったそうな。それで、そのアーレーという人は、魚釣りに出ていて、
「あんたは、どういう人か」
「俺は、海から(来たもんで)、世果報の神だ。農作物を稔らせたり、稔らさなかったりするのは俺次第なんだ。入口を聞かせてくれ。どこから入ったら、この島には到着できるのか」と言ったところ、この人は、アレーという人だったので、
「アーレー口というのがあるよ。このアーレー口は、俺の口だ。アーレーという口は、ここから行くと岩礁にもかからずに行ける」
「そんなら、ここから行けば、無事に島に到着できるんだね」
「到着できるよ」と言って、「あんたは、世果報の神、豊作の神でいらっしゃるなら、俺の畑は必ず、俺の畑だけは豊作にしてくれ」と頼んだところ、
「そんなら、お前の畑には、サンを結んで立てなさい。印をしておきなさい」と言ったそうな。
そういうわけで、薄を取って来て、サンを結び、すべての畑に立てるようになったそうな。この海から世果報の神がおいでになったときに、約束したので、ちゃんと自分の畑だけでなく、村中の畑にサンを立てるようにしたそうな。世果報の神がこう約束したので、神様は、俺の畑を必ず、豊作にしてくれるということになったので、それを村全体の人に分けあたえなければと、村の人々に教えたそうな。
それで、物忌みのときに、村から選出する三人の人夫は、すべての畑を回って、このように、スバを結んで立てたのですよ。このスバは、その世果報の神との約束だったので、すべての畑が豊作になったそうな。
この行事は、最近、五十年前まで、この島で行なわれていたよ。私たちの二十代までは、かなり盛んにこの物忌みの行事は、盛大に行なわれていたが、今では廃止されて、なくなってしまったよ。(『竹富島・小浜島の昔話』)
②沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~昔、竹富島にアールマイという人がいた。ある晩、夜づりに沖に出ていると、大きな船がやって来て、わたしは病魔の神だが、港口を教えてくれたら、お礼にお前の畑だけは病魔を入れないことにしてやると言うので、島の乾の方角にアールマイ港口があると教えた。病魔の神は、畑に薄を一結びむすんだ印をつけよと言うので、アールマイは、一足先に上陸して、道の両側の畑に薄を差して歩いて病魔の神を村に入れないようにした。それから竹富島ではアールマイの教えとして、種子蒔きした畑に、「アールマイぬノールフキ」
と唱え、結び薄を差すこととなった。(『蟷螂の斧』)
関連記事