穴石 ~琉球沖縄の伝説
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~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~
奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第121話。
穴石
石垣島野底村より、於茂登岳を横断して、桃里村に通じる山道はウラソコ越地と呼ばれ、渓流は紆余曲折して七つ折りとなつているため、俗にナナッカーラと言われています。
ある時、桃里村の乙女が、野底村の二歳と恋仲になり、毎夜、ナナッカーラで密かに睦事を交わしておりました。雨や風さえも、二人の情火を妨げる事は出来ませんでした。
やがて乙女と許嫁との婚礼の日が近づいてきました。
相思相愛のビラマ(※二歳の異名)との別れの日もまたやって来て、草木さえも悲哀を漂わせる中、ビラマと乙女は、一晩中、互いの行末を語りました。止めどない涙の雨が全てをすっかりと湿らせ、愛情が籠もった互いの言葉の遣り取りに合わせる様に、手にした石で腰掛石を叩くその音色は夜もすがら(※暮れ方から夜明けまでずっと)、山彦となって、深い渓谷を悲しげに響き渡りました。
やがて聞こえてきた、夜明けを知らせる鳥の声に驚いた二人は、各々の家路を急ぎました。
叩いた石面に、その恋の印として今も残った跡が、穴二つ。
地元の人々の間で、それはアボイシと呼ばれ、男が穿った穴より、乙女が穿った穴の方が深いのは、その情の深さ故と言われているそうな。
※この話の参考とした話
①柳田~「腰掛石」「穴石」
②沖縄県石垣市~「旅と伝説」第四巻一号
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●伝承地
①柳田~「腰掛石」「穴石」
②沖縄県石垣市~野底村より、おもと山脈を横断して、桃里村へ通ずる山道を「ウラソコ越地」と呼ぶ、渓流、紆余曲折して七ツ折りとなつてゐる、俗に、ナナッカーラと称す。桃里村の乙女が、野底村の「二歳」と恋仲となり、毎夜、ナナッカーラで、睦事を交はした、雨も風も二人の情火を妨げなかった。乙女は、許嫁と、婚姻の日が近づいた、想思の「ビラマ」(二歳の異名)と別るゝの悲哀あり、一夜「ビラマ」と行末を語り、涙の雨、湿る情語の連鎖の句点に、手にせる石で、腰掛石を搗く音色、山彦に響き夜もすがら、暁鳥の声に驚きて各々家路を急げり、たゞ石面に、恋の意地を痕せる穴ニツ。郷人、アボイシと呼ぶ、男の穿てるものより、乙女の穿てる方情や深しと云ふ。(「旅と伝説」第四巻一号)
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