~琉球沖縄に伝わる民話~

『球陽外巻・遺老説伝』より、第70話。

玉美嘉姫(たまみかひめ)

 むかし、宮古の伊良部に、ある夫婦がいました。
 ある時、夫婦の間に一人の女の子ができ、名前を、玉美嘉(たまみか)と付(つ)けました。
 この子供は、生まれつきすばしっこい上に、姿がたとえ様(よう)もなく美しく、父母は宝のように大切に育てました。また、村の人々も皆(みな)、口を揃(そろ)えて賞(ほ)め讃(たた)えました。
 やがて、子供が十五才の少女になった時に、たまたま海辺(うみべ)に潮(しお)を汲(く)みに行きましたが、汲んでいるうち忽(たちま)ち神様になってしまい、とうとう何時(いつ)まで経(た)っても、家に帰って来(き)ません。
 父母は顔色を失って、村の隅(すみ)から隅まで、手を尽(つ)くしてたずね歩きましたが、行方(ゆくえ)はどうしても解(わか)りませんでした。
 こうして、三月の月日が流れました。
 ある日、この女神が、乗瀬嶽(のりせだけ)に出現なさいました。
 当然のことながら、それを聞いて喜んだのは父母です。取(と)る物も取り敢(あ)えず駆(か)け付(つ)けて娘を抱(だ)こうとしました。
 すると女神は、袖(そで)を払(はら)って言いました。
 「私は、今ではもう、島護(しまも)りの神になったのです。ですから、一寸(ちょっと)の間も、ここに留(とど)まっては、いられないのです。」
と言ったかと思うと、直(す)ぐに嶽の中に入ってしまいました。
 父母は、ただ呆然(ぼうぜん)とこれを見守(みまも)っていましたが、とうとう声を出して泣き出しました。
 しかし、やがて気をとり直(なお)すと、神女が、袖を払った時に千切(ちぎ)れた袖を、その嶽に納(おさ)めたそうです。
 当時の人々は、このことを聞いて、その嶽を神嶽(かみだけ)とし、今でも幸福(しあわせ)を願う人は、必ずここに来て、祭祀(おまつり)するということです。


※注
【袖を払う】(そでをはらう)袖(そで)に付(つ)いた塵(ちり)などを払い落とすという意から、自分の考えや意志を通す上で邪魔になるものを払い除(の)けるの意。似たものに、袂(たもと)を払う、がある。
【祭祀】現代では祭祀は「さいし」と読む。神や祖先を祭ること。祭典(さいてん)


Posted by 横浜のtoshi





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yukuru mama、はいさい、ちゅーうがなびら。

異常気象の寒さのせいで、大変です。

それから3月までの、
4時半起きが4時起きになり、
6~6時半の仕事開始が5~5時半に始めているのに仕事が終わらず、
おまけに残業の毎日です。

しかも、仕事の役割が、一気に増えました。
休憩時間は、全くないに等しいです。
出張も、週に1回で、帰宅すると11時です。

1日が終わって、
その日にしなければいけない事が、終わっていない毎日の連続です。
当然、スピードが要求されます。

今回の作品を、ブログで取り上げた理由の一つに、
沖縄や奄美には、
素適な民話が、たくさんあるというのに、
良くても限られた民話だけに、スポットが当てられるだけなので、
何とか、日の目を見ない民話を、
ひとつでも、書いてみたいという、僕の趣味もあります。

もったいないし、
もっと先祖からの言葉に、耳を傾けるべきだと思うのです。

都会的とか、流行とか、新しいものの中には、
しょせん、価値が高い物など、少ないのです。

というよりはむしろ、
新しさは、古いものを知ってこそ、本当の価値を見いだせると思うんです。

古典や基本を、元にしていない文学など、しょせんは、意味が薄いですから。
人間だって、同じかな?(これは言い過ぎか?)

ああ、もっと僕も、学問しないとなあ~。

温古知新(おんこちしん)、
まさに、 古きを温(たず)ねて新しきを知る、です。

まあ、何とか、頑張っていきま~す。
いつまで続くか、わかりませんが・・・・・・。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年04月14日 18:55


横浜のtoshiさん

こんにちは~o(^-^)o

今日は寒くてバイク通勤が堪えたでしょうね!

今年は何時までも気候が落ち着きませんね~

色んな伝説や民話がありますが、沖縄の民話は
知らない話ばかりなので読んでいて楽しいですね~(o^∀^o)
Posted by yukuru mama at 2010年04月14日 13:23


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