~琉球沖縄に伝わる民話~

『球陽外巻・遺老説伝』より、第74話。

弦月(かたわづき)の船

 むかし、八重山竹富島に、二人の兄弟がおりました。
 兄の名前は島仲(しまなか)といって七才、妹は粟礼志(あわれし)といって五才でした。
 ある日のこと、兄は妹を連(つ)れて福崎(ふくざき)という所へ行って、二人で遊んでいると、たちまち得体(えたい)の知れないものが海に浮んび上がり、二人の方へやってきます。
 丁度(ちょうど)、円(まる)を二つにしたようなもので、兄の島仲は大層(たいそう)不審(ふしん)に思い、手を伸(の)ばしてこれを取ってみましたが、何を感じたのかそれから直(す)ぐ家に帰り、斧(おの)を持ち出すと、山に行って木を伐(き)り、先刻(せんこく)海で拾(ひろ)った物を真似(まね)て、初めて舟を造りました。
 その時、妹が御飯(ごはん)を持ってきたので、島仲が言うことには、
 「どうかして、お前が早く大きくなって、霊神(れいしん)より、お前にお託(たく)しがあって、この船の名前をいただきたいものだ。」と。
 この言葉が、終わるか終わらないうちに、神様が現れて、妹にお託(たく)しになりました。
 「そなたの兄の造った船は、誠(まこと)に丈夫(じょうぶ)に出来(でき)ている。あれならば、楽に航海することが出来る。今、この船に五包七包(ごほうななほう)という名前を与(あた)える。」
と申(もう)されたのでした。
 さて、それからしばらく経(た)ったある日のこと、島仲は、遊ぼうとこの舟を海に浮べると、俄(にわか)に大波がやってきたと思う間(ま)もなく、舟は大波で流されてしまいました。
 島仲は、ただ、うろたえるばかりで、あれよあれよと思う間に、折(おり)からの強風のため、ぐんぐん沖へ沖へと舟は流されていってしまったのでした。
 その後、舟は黒島に漂(ただよ)い着(つ)いたのでした。
 そして、この舟を見付(みつ)けた黒島の人達は皆(みな)、素晴(すば)らしいこの舟を真似(まね)て舟を造りました。
 ある時、黒島の人がその舟で竹富にやってきました。これを見た島仲は、とても不思議に思いました。黒島の人達が乗ってきた舟は、先に自分が造った舟と、あまりにそっくりだったからでした。そこで、自分が不審(ふしん)に思っていることについて黒島の人達に聞(き)いてみると、島仲の流れてしまった舟に似せて作ったとのことでした。
 それからというもの、造船は必ず竹富島でしておりましたが、近世になると石垣島で造るようになったそうです。


 
※注
【竹富島】(たけとみじま)以前の発音では「だきどぅん」など。石垣間切(いしがき・まぎり)
【お託し】(おたくし)~託宣(せんたく)、託宣(たくせん)、神託(しんたく)、御託宣(ごたくせん)に同じ。神仏が現れて、その意志を告げること。また、そのお告げ。
【黒島】(くろしま)以前の発音では「くるしま」など。石垣間切(いしがき・まぎり)
【石垣島】(いしがきじま)以前の発音では「いしがち」など。


Posted by 横浜のtoshi


※お読み頂いた、みなさんへ。
久しぶりに、何とか書いてみました。
まだ慣れていないのと、仕事が山積みのため、
以前のように毎日書くのは無理なものの、
少しずつ書いていきたいと考えております。
どうぞ、気長にお待ち下さい。
感謝。



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mamaこんにちは。

今年度は、まあ分かっていた事ですがとても忙しい毎日。
それに加えて、mamaが察するように、
今週末にむけて、4つ、作らないといけなくて、
その後は事務作業が続きます。

こちらこそ、読んで頂きまして、ありがとうございました。
横浜は毎日、サウナ状態の、梅雨真っ盛り。ムンムン・・・・・・。

息抜きに、月2回行っていた沖縄ですが、
さて、これからは、どこに行って息抜きしようか、夜な夜な、考えていま~す。
では。
Posted by 横浜のtoshi at 2010年06月29日 06:21


横浜のtoshiさん

こんばんは~o(^-^)o

久々の民話ですね~(笑)
少しは指の方も良くなって来たみたいですが、
余り無理をしないで下さいね!o(^-^)o

これから仕事が一段と
忙しくてなるのでは??

楽しく民話を読ませて
頂きました。o(^-^)o
Posted by yukuru mama at 2010年06月28日 22:57


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