てぃーだブログ › 琉球沖縄を学びながら、いろいろ考えていきたいな~ › 新・琉球民話・口碑伝説集 › 神になった大屋子~新・琉球民話・口碑伝説集第15話

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~琉球沖縄に伝わる民話~

新・口碑伝説民話集録
『琉球民話集』より、第15話


(かみ)になった大屋子(おおやこ)



 むかし、南風原(はえばる)間切(まぎり)宮平村(みやひらそん)に、ヨクツナ大屋子(おおやこ)という人がいました。
 ある日、西原(にしはら)間切(まぎり)我謝(がじゃ)海辺(うみべ)(かめ/カーミー)()()りにしたところ、一人の女性が近づいて来て言うことには、
 「家にお持ち帰りになられるのが、(よろ)しいでしょう。」と。
 そう言うと、女性は大屋子(おおやこ)の肩に、(かめ)(かつが)せました。
 それからしばらく大屋子(おおやこ)が歩いた時に、(かめ)大屋子(おおやこ)(くび)()()いて、大屋子(おおやこ)はその(きず)のために死んでしまいました。
 (しかばね)(とむら)われて、三日目、たまたま家族が(ほう)むった墓を見に行ってみると、死骸(しがい)はなく、墓が(から)でした。しかも不思議なことに、何処(どこ)からともなく大屋子(おおやこ)の声が聞こえてきて言うことには、
 「実は、私は死んでなどいない。儀来河内(ギライカナイ)に、お(まい)りに行っているのだ。」と。
 人々は早速(さっそく)集まって話し合い、大屋子(おおやこ)はきっと神様になったに違いないと「ヨクツナノ嶽」と名付(なづ)けて、それから神としてお(まつ)りしたそうです。

 
※注や解説

大屋子(おおやこ/うふやこ/うふやくう/うふやくぅ)】~琉球國の制度の中央官人に、元々「大屋子もい(※「もい」は接尾美称)」があり、領有する間切やシマの名をとって称した。やがて「大屋子もい」に「親雲上(ぺーちん)」の字が当てられるようになる。地方制度として、古琉球の沖縄本島には二十七の間切が存在し、間切行政を担当する官人の職名は「首里大屋子」で、例えば今帰仁の場合は「今帰仁首里大屋子」となる。間切を構成するシマには、順に、大屋子、与人(ゆんちゅ)(おきて)目差(めざし)などがいるが、「首里大屋子」と「大屋子」は同格で、言ってみれば地元の有力者達。
南風原(はえばる)】~南風原間切。南風原の以前の発音は「ふぇーばる」など。
宮平村(みやひらそん)】~宮平村の以前の発音は「みゃーでーら/なーでーら」など。
西原(にしはら)】~西原間切。西原の以前の発音は「にしばる」など。
我謝(がじゃ)】~我謝村。我謝の以前の発音は「がーじゃ」など。
儀来河内(ギライカナイ)】~「ニライカナイ」とも。琉球神道において、浄土(じょうど)としている海の彼方(かなた)楽土(らくど)(※心配や苦労なく楽しい生活ができる土地。楽園)。沖縄や奄美の各地に伝わる他界概念(がいねん)(※考え方、 物事全体の意味内容のひとつ)理想郷(りそうきょう)(はる)か遠い東(※辰巳(たつみ)方角)の海の彼方(かなた)、または、海の底や、地の底にあるとされる異界(いかい)豊穣(ほうじょう)や生命の源。神界(しんかい)。年の初めに、ここから神がやって来て豊穣をもたらし、年末に帰るとされる。また、人の魂もここからやって来て肉体に宿(やど)り、死者の魂はここに帰ると考える。特に琉球時代、死後七代()つとその魂は親族の守護神になると考えられ、後生(ぐそー/あの世)である儀来河内(ギライカナイ)は、祖霊が守護神へと生まれ変わる=祖霊神(それいしん)誕生の地だった。民俗学の二大巨頭の、柳田國男(やなぎだくにお)は、日本神話の「根の国」と同一とした。折口信夫(おりぐちしのぶ)は、琉球の他界(たかい)概念として、守護する神々の神界(しんかい)としてオボツカグラを想定し、ニライカナイを水平の、オボツカグラを垂直の他界とし、水平表象と垂直表象で考えた。古くは、儀来河内の表記が多い。なお言葉の変遷は、儀来河内、ギライカナイ、ニライカナイと考えられる。
【ヨクツナノ嶽】~善縄御嶽(よこちなうたき)/善縄の御嶽(よこつなのうたき)。神名:カメツカサカメフチ御イベ。 現在の、善縄の御嶽(うたき)は、一九四九年に、宮平の御嶽と拝所九箇所、井戸五箇所の神々をまとめて合祀(ごうし)したもの。御嶽がある小高い丘は、ウガンモーと呼ばれる。御嶽の裏手に、善縄大屋子之墓がある。またここには、屋敷もあったと言われている。
※【ヨクツナ大屋子】~善縄大屋子(よくつなうふやこ/よくつなおおやこ)



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