はまうり

2017年03月03日

Posted by 横浜のトシ(爲井) at 05:00│Comments(0)伝説・歴史・雑学・言い伝え等
はいさい、今日(ちゅう)(うが)なびら。

浜下(はまう)について、教えて下さいという、
ご質問を受けました。

そこで、今回の話題は「浜下(はまう)」。

沖縄や奄美、つまり琉球(りゅうきゅう)諸島で、
旧暦(きゅうれき)3月3日に行われる、
琉球(りゅうきゅう)伝統行事の一つです。

現在の発音は、
沖縄本島では「ハマウリ、ハマオリ」、
宮古諸島では「サニツ」、
八重山諸島では「サニズ」、
徳之島や奄美大島では「ハマウリ」
です。

日本の旧暦(きゅうれき)太陰(たいいん)太陽(れき)の3月3日は、
干満(かんまん)の差、つまり()()きが、
年間で最も大きい「大潮(おおしお)」にあたります。
この日の干潮(かんちょう)時には、当然、
海浜(かいひん)干瀬(ひし)が最も広範囲(こうはんい)に広がるため、
海岸に出かけて魚貝(るい)()ったり、
海草を()る風習が、
琉球には昔からありました。

そしてやがてこの日には、
馳走(ちそう)を持って海辺に出かけ、
特に女性が、
手足を海水に(ひた)して身を(きよ)め、
健康を祈願するという風習として、
琉球行事の一つとして定着しました。

なお、旧暦3月3日以外の日にも、
災厄(さいやく)を払うために浜下(はまう)りする事も、
増えていきました。

由来とされる民話のいくつかは、
この民話ブログで何度(なんど)(あつか)いましたが、
簡単(かんたん)に復習しておきましょう。

娘が美男子の子を身籠(みご)もり、
母は娘に、次に男がやって来たら、
着物の(すそ)に気づかれないよう、
糸を()いつけるように言います。

男が帰った後、娘は糸を辿(たど)ります。
すると男の正体は、
アカマター(へび)()けた、
妖怪マジムンなのでした。
それを知った娘は、
海に飛び()んで身を(きよ)め、
アカマターの子を流したという話が、
浜下(はまう)由来(ゆらい)の琉球民話や伝説として、
祖先から子孫へと伝わって来ました。

なお、ここで今回、
補足しておきたいもう一つが、
浜下(はまう)」という発音についてです。

「はまおり」が琉球に伝わって、
エ段がイ段、オ段がウ段にという、
琉球語の規則(きそく)によって、
「お」が「う」に変化し「はまうり」に。
やがて、それに漢字が当てられ、
つまり、「はま」に「浜」、
「うり・おり」に「下り・降り」が当てられたと、
想像するのは(むずか)しくはありません。

さて、この「おり」ですが、
言うまでもなく日本の古語で、
現代語ではありません。

つまり、琉球語の 、この言葉は、
琉球國時代、あるいは、それ以前から、
琉球にある言葉だとわかります。

おそらく、古語の動詞、
ラ行上二段動詞「おる」の連用形「おり」が、
名詞化したものが、
琉球に伝わったのでしょう。

こんなところにも、
琉球の言葉が日本語の、
かなり古い言葉の流れである事がわかり、
それだけでなく、
日本語のルーツのヒントや、
謎を解き明かす鍵として存在し、
とても重要な役割を(にな)っているのが、
分かると思います。

研究上の定説(ていせつ)では、
古い時代に日本語が、
奄美や沖縄にまで伝わり、
ところが奄美や沖縄は島々のため、
その言葉が、そのまま島々に残って、
今に伝わると考えられています。

ちなみに、あくまで大まかですが、
日本を考えた時、
北は北海道から南は沖縄まで、
ほぼ3,000キロで、
そのうち3分の1の1,000キロが、
現在の沖縄諸島と奄美諸島なのでであり、
その1,000キロに、
島々が、散らばっています。

琉球の起源を、中国に求める考えがあり、
琉球國時代からそれはありましたが
(あくまで少数意見)
言葉からも、それは完全な間違いで、
否定されるべき事であるのが、
わかると思います。
そもそも琉球の歴史や地理からも、
そしてなにより琉球の言葉そのものは、
明らかに日本語の流れなのです。

特に今の時代、この考えは大変に危険で、
琉球は、元々中国だったという、
つまり、
沖縄を自国の領土と考える中国思想の、
元になっています。
ですから特に沖縄の人は、
その点に充分、注意が必要です。

なお、
八重山の言葉には、
例えば、
「パピプペポ」のような半濁音(はんだくおん)があります
(※例えば「ばびぶべぼ」は濁音(だくおん)で、「パピプペポ」半濁音(はんだくおん)

日本の古代語は濁音(だくおん)でなく、
半濁音(はんだくおん)だったのではないか、
という説があり、
まさに八重山の言葉によって、
それは説得力をもたらします。

ですから、琉球の古い言葉を残すこと、
そのこと自体も大切なものの、
ほかにも色々な面でも、
残すことは、とても大切なことなのです。

沖縄や奄美の、
古くからある日本の言葉は、
とても重要な価値をもちます。
絶対に、残さなくてはいけないのです。




同じカテゴリー(伝説・歴史・雑学・言い伝え等)の記事

コメント以外の目的が急増し、承認後、受け付ける設定に変更致しました。今しばらくお待ち下さい。

※TI-DAのURLを記入していただくと、ブログのプロフィール画像が出ます。もしよろしければ、ご利用下さい。(詳細はこの下線部クリックして「コメ★プロ!」をご覧下さい。)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
伝説・歴史・雑学・言い伝え等」 新着20件  → 目次(サイトマップ)       設置方法