世したてたん話 ~琉球沖縄の伝説

2010年10月28日

Posted by 横浜のトシ(爲井) at 20:20│Comments(4)琉球沖縄の伝説・奄美編

みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第16話。


世したてたん話



 むかしむかし、ネリヤという女の神さまが、海からやってきました。その時に、キリシマダンという男の神さまもまた、海からやってきました。
 その時、キリシマダンは、一丈三尺五寸(いちじょう・ごしゃく・ごすん)の鉄の(ぼう)(つえ)にしていました。
 するとそれを見て、ネリヤの神さまが、キリシマダンに言うことには、
 「あなたは、(つえ)()っていますが、どうして海からそんな物を持っていらっしゃったのですか。」と。
 キリシマダンの神さまが、こたえて言うことには、
 「わたくしは、海と島とを(つな)()わせる神なのです。この杖は、繋ぐための道具なのです。」と。
 それを聞いたネリヤの神さまが、言うことには、
 「どうか、わたくしと夫婦(ふうふ)になって、一緒(いっしょ)()らして下さい。」と。
 キリシマダンの神さまが、言うことには、
 「急にそう言われても、それは出来(でき)ません。」と。
 すると、ネリヤの神さまが言うことには、
 「あなたと私は出会(であ)ってしまいました。もしも、あなたが私と一緒(いっしょ)にならなければ、これから先、どんなにあなたが、島と海を(つな)()わせようとしても無理(むり)なのです。」と。
 そのような、やり取りがあって、とうとう最後に二人は、夫婦になって、一緒(いっしょ)に暮らすことになりました。
 そして二人の間には、男の子が三人と、女の子が三人、出来ました。
 ある日のことです。
 ネリヤの神さまが、キリシマダンの神さまに、お願いして言うことには、
 「私が、お(さん)をする時に、決して(そば)には近寄(ちかよ)らないで下さい。」と。
 すると、キリシマダンの神さまは、約束(やくそく)すると言いました。
 そして月日が流れました。
 キリシマダンの神さまは、ネリヤの神さまから(ねん)()されて以来(いらい)(かえ)って、お(さん)を見てみたくなってしまい、そこで忘れた()りをして何食(なにく)わぬ顔で、お産をしている座敷(ざしき)(はい)って行きました。
 すると、ネリヤの神さまは()き上がって、大層(たいそう)(おこ)りながら言うことには、
 「あれ(ほど)(かた)約束(やくそく)してあったのに、あなたは、その約束を(やぶ)っておしまいになりました。」と。
 ネリヤの神さまは美人だったので(じつ)はキリシマダンの神さまは夫婦(ふうふ)になったのですが、(おこ)ったネリヤの神さまの髪はそれ以来針鼠(はりねずみ)のように変わってしまい、衣服(いふく)(たちま)(なわ)()んだ粗末(そまつ)なものに変わってしまいました。そしてまた、キリシマダンの神さまは、一緒(いっしょ)にいると、(はだ)(かゆ)くてたまらなくなり、お(たが)いにこれからもずっと夫婦でいるのは無理(むり)だと相談(そうだん)して、二人は別かれることになりました。
 ただその時に、生まれた男三人と、女三人の子ども達はどうしようかと、キリシマダンの神が言うと、ネリヤの神さまが、こたえて言うことには、
 「子ども達を、別々(べつべつ)()ける必要はありません。わたくしが、(くらい)(さず)けてあげれば、それで大丈夫(だいじょうぶ)です。」と。
 それから、私は季節(きせつ)ごとに、その季節の作物(さくもつ)()を、空から落としてあげることにしますと言いました。
 続けて、子ども達に言うことには、(むぎ)の場合は、何月(なんがつ)(たね)をおろすから、育てて何月に収穫(しゅうかく)し、それから、(いね)は、何月に種をおろすから、何月に収穫しなさいというように、方法(ほうほう)を作物ごとに、こと(こま)かく(おし)えたのでした。
 こうして、子ども達は作物(さくもつ)耕作(こうさく)することになりました。
 また、上から順に、男の子と女の子を結婚させました。
 それからネリヤの神さまは、子ども達に()かって言うことには、
 「一番上の夫婦は、(から)の国を()てなさい。真ん中(まんなか)の夫婦は、那覇(なは)に国を建てなさい。一番下の夫婦は大和(やまと)の国を建てなさい。」と。
 それからまた、ネリヤの神さまは、一番上の二人には金を、真ん中の二人には銀を、下の二人には鉄を(さず)けました。そのため子ども達は、唐の金王(きんおう)、那覇の銀王(ぎんおう)、大和の鉄王(てつおう)となり、世の中はこの子ども達によって(つく)られていきました。
 そしてまた、金や銀や鉄の(はじ)めは、そういうことなのだそうな。


 
※この話の参考とした話
奄美・鹿児島県大島郡伊仙町伊仙~『徳之島の昔話』


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●伝承地
①奄美・鹿児島県大島郡伊仙町伊仙~ネリヤン神様(女の神様)が海からとおっていらっしゃった。その時、また、キリシマダン(男の神様)も海からいらっしゃった。その時、キリシマダンは一丈三尺五寸の鉄の棒をステッキについていらっしゃった。そこでネリヤの神様が、キリシマダンに、
 「そんなステッキを持って、どうして海から通っていらっしゃるのですか」というと、キリシマダンが、
 「自分は海と島とをつなぎあわす神だ」といった。そこで、ネリヤの神様がキリシマダンに、 「自分と一緒に暮して下さい」といった。キリシマダンは、
 「それは出来ない」といった。ネリヤの神様は、
 「あなたが私と一緒にならなければ、どんなにあなたが島と海をつなぎあわそうとしても継ぎあわせることは出来ませんよ」といったので、とうとう二人一緒に暮すことになった。そこで二人の間に男の子が三人、女の子が三人出来た。ある日、ネリヤの神がキリシマダンに、
 「私(わん)がクェーテ(お産)する時や傍(すば)かち寄てぃたぼんな」という相談をした。すると、キリシマダンはネリヤの神があんなことをいったから、ためしに寄ってみなければならないと思って、その座敷にはいって行った。
 ネリヤの神様はそこで起きて来て、ネィターして(怒って)、
 「あれ程かたく約束してあったのに、その約束を破った」といって怒った。ネリヤの神様は、美人と思って、その二人なったのに、ネリヤの神様の髪はネズミになって、衣類はチグナ(つぐ縄)着ているようになっていたので、キリシマダンは肌がよく(肌かゆく)なって、お互いにジビーチ(離婚)サンバシマン(しなければならない)といって、二人別れることになった。
 そこで、生まれた男三人、女三人の子供達はどうするかと、キリシマダンがいうと、ネリヤの神は、
 「別けなくてもよい。自分が位をつけてやれば、それで充分だから」と言った。
 そして、折節が来たら、その折節のムンチクリ(作物)の穂(ふ)、穂を落してくれるといって、麦は何月種をおろして、何月にとれる。それから稲は何月に種をおろして、何月にとれるという方法を教えて、子供達につくらせることになった。そして、一番上の男の子と、女の子とをなし(結婚させ)て、二人を、
 「唐の国を建てよ。中の二人は那覇に国を建て、一番弟の男女は大和に建てよ」と云った。それから金を分けるのに、上の二人にはカラギンを、中の二人には銀を、下の二人には鉄をくれたので、唐は金王、那覇は銀王、大和は鉄王というものになり、世をしたてたんち。金というものはそうしてできたものだという。(『徳之島の昔話』)


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SUZUさん、こんにちは。

お気遣い、ありがとうございます。
やっと、
昨日今日で、激務は終わり、一息です。

流石に、
5時出勤で、深夜まで、休みなしの仕事は、
この歳では、こたえます。

それでも、やり遂げて、ほっとしています。
朝ご飯が、昼ご飯に、昼ご飯が夕飯になったり、
気づくと、昼ご飯を食べるのを忘れたなんて日々は、
この数年で、一番、忙しかったです。

それだけに、
SUZUさんはじめ、
みなさんの励ましが、心強かったです。

いつもコメント、ありがとうございます。
では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年10月31日 19:35


お返事は気にせず、身体に休みを与えて下さい、お仕事大変なんですね…
Posted by SUZU at 2010年10月31日 10:46


SUZUさん、こんにちは。

少し、体調不良なのと、
仕事が激務で、睡眠時間が取れないのとで、
お返事が遅れました。

はい。約束はやはり、守るべきですね。
了解、いたしました。

コメント、ありがとうございます。
では。

※なお、
ブログの調子が、このところ悪く、
原因が不明です。
そのうちに休みが来ましたら、
見直してみます。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年10月30日 17:29


toshiさんこんにちは、

見てはいけないと、云われるとどうしても見たくなります・・みなさんもそうだと思います。
でも、美人の奥様が突然かわったら、びっくりしますけど、奥様も気の毒ですね!約束はやはり
守りましょう・
Posted by SUZUSUZU at 2010年10月29日 17:28


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