世の始まり ~琉球沖縄の伝説

2010年10月29日

Posted by 横浜のトシ(爲井) at 20:20│Comments(4)琉球沖縄の伝説・奄美編

みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第17話。


世の始まり



 むかしむかし、()(なか)が、(はじ)まろうとしていた(ころ)の、お(はなし)です。
 天照大神(あまてらすおおみかみ)という神さまや、たくさんの神さま(たち)が、まず(むし)をお(つく)りになり、そして(さかな)を造り、次々(つぎつぎ)に、世の中の色々なものを造られていきました。
 そして、人間(にんげん)を造らなくてはならなくなりました。
 そこでまず、粘土(ねんど)で人の形をした人形(にんぎょう)沢山(たくさん)(つく)って、庭先(にわさき)()しました。
 すると突然(とつぜん)俄雨(にわかあめ)()って()たため、大急(おおいそ)ぎで用意(ようい)してあった(かた)に人形を入れなければならなくなりました。
 そこにいたみんなで手分(てわ)けして、足を()げたり、手を折り曲げたりして、ようやく全部(ぜんぶ)の人形を人間の(かた)(おさ)めることが出来(でき)て、(なん)とか沢山(たくさん)の人間を造ることができました。人々の中に、体が不自由(ふじゆう)な人がいらっしゃるわけは、この時、俄雨(にわかあめ)のために、とても(いそ)いで足を曲げたり、手を折ったりなど、したためなのだそうです。
 さて、(つぎ)に、この世の中を、(だれ)(おさ)めることにしようかということになりました。
 神さま達は、話し合った(すえ)に、枯木(かれき)()ってきて、みんなに一本ずつ()けました。そして枯木(かれき)に花が()いた人が、この世の中を(おさ)めることにしよう、ということになりました。
 しかし、天照大神(あまてらすおおみかみ)は、花が自分の(えだ)()くと決まっていることを()かっていたので、()ていました。ところが、()ている()に、(とな)りで()ていた神さまが、そっと枝を()()えてしまいました。
 ()くる(あさ)、花が()いた(えだ)()っている神さまが、言うことには、
 「()(くだ)さい。自分の木に花が咲いたので、世の中は自分のものです」と。
 すると、天照大神(あまてらすおおみかみ)が言うことには、
 「(たし)かに世の中は、(えだ)をもっている以上(いじょう)は、君の世の中であると、みんなが(みと)めざるを()ない。
 (ただ)し、君がしたことは(あき)らかで、そのために世の中が(つづ)(かぎ)り、盗人(ぬすっと)が、いなくなることはなくなってしまったのだ」と。
 そして、その言葉(ことば)(どお)り、むかしから今になってもいつの世も、世の中に様々(さまざま)盗人(ぬすっと)()えることがないのでした。
 ところで、徳之島(とくのしま)では、やっと作物(さくもつ)を作っても(ぬす)まれてばかりで、こんな盗人(ぬすっと)がいる世の中では、苦労(くろう)して作物(さくもつ)など(そだ)てても意味(いみ)がないということになって、(むぎ)も、(いね)も、(あわ)も、()えていた作物の(おお)くが()()かれてしまいました。
 そして、いくつかの作物だけは、(あたま)の部分にだけ、()がつくように、(のこ)った部分の()などは()(のぞ)いたところ、穂先(ほさき)だけに()がつくようになったそうです。
 ところが、はい(まめ)という作物(さくもつ)以外(いがい)手入(てい)れをしてみると、とても手が(いた)くなったため、よい穂先(ほさき)の作物だけを()りすぐることなど出来(でき)なくなり、作物などすべて()ててしまえと()()てられてしまいました。
 そのために、はい豆だけが()をつけるようになり、()の作物は、成長しても、根元(ねもと)から先端(せんたん)(いた)るまで()を結ばなくなってしまったのだそうな。


 
※この話の参考とした話
奄美・鹿児島県大島郡徳之島町花徳~。『徳之島の昔話』


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●伝承地
①奄美・鹿児島県大島郡徳之島町花徳~昔、世の始まりに(その神様の名前はもう忘れてないが)天照大神と他の多くの神々が虫を作り、魚を作り、次々と世の中は作って行ったが、人間というのも作らなくてはいけないということになり、粘土で人形を沢山作って庭先に干してあったら、とつぜんに、にわか雨が降って来たので大急ぎで、これを型に入れて、しまつしなくてはならなくなり、足を曲げたり、手を折ってしまったりしてようやく人形はおさめることが出来、そこで人間が出来ることは出来たが、さてこれを治めるには誰が治めるかということになった。そこで、枯木を折って来て、その枯木に花の咲いた人が治めることにしようということになった。天照大神は当然花は自分の枝に咲くものだと思いこんでねていたら、隣にねていた神様がそっと花をかえてしまった。明くる朝、その神様は、
 「さあ、自分の木に花は咲いたから自分の世の中だよ」というと、
 「うん、世の中は君の世の中であるのは認めるが、その代り世のある限り盗人の種はきれないよ」といったので、今まで世の中に盗人のたえないようになってしまった。それで、こんな盗人者の世の中なら、
 「三すじがむぃかまし」といって、麦から、稲から、粟(おー)から全部ひきすぐって、末(すら)にだけ実がもてるように荷造っていってひきすぐったら、そのように穂先にだけ実がつくようになった。ところが、はい豆になった時にはとても手がいたくて、すぐることが出来なくなり、こんなもの捨ててしまえと投げ捨ててしまったので、はい豆だけが実がなるようになり、他の作物は根もとから末(すら)にいたるまで何一つ出来ないようになってしまったそうな。また、同じ人間の中にかたわものが出来るようになったのも、この俄雨で足を曲げたり、手を折ったりしたためにこんなになってしまったのだという。(『徳之島の昔話』)


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ぐるんぱサン、こんにちは。

少し、体調不良なのと、
仕事が激務で、睡眠時間が取れないのとで、
お返事が遅れました。

神様が、なぜ、人間をつくったのか?
ん~、これは、答えるのが、なかなか難しいですね。
特に、
幼い子どもに聞かれた時など、
どう、上手に答えるか、
大人としては、考えてしまいますね。

土からつくるというのは、
明らかに、
ヤマトの国の神話、『古事記』『日本書紀』などの、影響だと思います。

神様の子孫についての話は、
もちろん、こういった書物にあります。

なお一般的に、
「八百万(ヤオヨロズ)の神」というように、
神さま全体を指したりもします。

コメント、ありがとうございます。
では。

※なお、
ブログの調子が、このところ悪く、原因が不明です。
そのうちに休みが来ましたら、見直してみます。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年10月30日 17:42


昆布山葵さん、こんにちは。

少し、体調不良なのと、
仕事が激務で、睡眠時間が取れないのとで、
お返事が遅れました。

確かに、おっしゃる通りです。
ギリシャ神話なども、
絶対神や、聖人的、というより、
まったく人間的なところのある神が、少なくありませんね。

今のように、
民主主義も、資本主義もなく、
そんな昔につくられたので、そこがまたおもしろいです。

コメント、ありがとうございます。
では。

※なお、
ブログの調子が、このところ悪く、原因が不明です。
そのうちに休みが来ましたら、見直してみます。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年10月30日 17:35


神様はなぜ、人間をつくったのかな???
神様の子孫についてのお話ってあるのかな???


そんなことを思いました、、、
Posted by ぐるんぱぐるんぱ at 2010年10月30日 07:18


神様も以外と人間的なことをしますね…(゜△゜*)

でも神話とか読んでると、神様が嫉妬してたり、横取りしてたり、必ずしも『聖人』的なイメージには収まらないこともありますねぇ。
Posted by 昆布山葵 at 2010年10月29日 22:12


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