マツバンの山 ~琉球沖縄の伝説

2011年06月09日

Posted by 横浜のトシ at 20:20│Comments(0)琉球沖縄の伝説・奄美編

みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第156話。


マツバンの(やま)



 むかし(むかし)のお(はなし)です。
 徳之島(とくのしま)山奥(やまおく)に、マツバンタと()ばれる(ところ)があります。その山奥(やまおく)には、マツバンという(もの)一人(ひとり)っきりで()んでいて、(ちか)くの(むら)人々(ひとびと)はマツバンをとても(おそ)れていたために、マツバンタには(だれ)(ちか)づきませんでした。
 ところがある(とき)に、尾母(おも)(むら)(ひと)が、(たむん)(ひろ)いのために女性三人(じょせいさんにん)()()って、(おそ)ろしい場所(ばしょ)()らずにマツバンタに()き、マツバンに()つかりました。
 するとマツバンは、もの(すご)形相(ぎょうそう)(おそ)(かか)かり、四人(よにん)一目散(いちもくさん)()げましたが、(もっと)(ちか)(むら)(ちか)くまでずっと()われて()たそうです。丁度(ちょうど)亀津(かめつ)尾母(おも)の、(ふた)(むら)への(わか)(みち)があり、四人(よにん)尾母(おも)への(みち)(ほう)(はし)って()げました。
 (わか)かれ(みち)から百米(ひゃくメートル)ぐらい()った(ところ)で、マツバンは(みち)(はと)がいるのを()て、()(みち)()げたのではないと(おも)って()(かえ)したのでした。
 もう(すこ)しで()()かれそうだった四人(よにん)は、(あや)うく(いのち)(たす)かったと(おも)ったのも(つか)()(あま)りに息急(いきせ)()って尾母(おも)まで(はし)(つづ)け、(むら)()くなり息絶(いきた)えてしまいました。
 なおマツバンは、山奥(やまおく)()(つく)り、立木(りゅうぼく)から(うす)などを(つく)って、(こめ)などを()べていたともいわれます。また、()()(むら)()りて()ては、(うし)(うま)(とり)などを(ぬす)んだともいわれます。また、神様(かみさま)ともいわれています。
 なお、その()尾母(おも)村中(むらじゅう)(ひと)でマツバン()()けたところ、クレジュンという(ところ)で、そのまま(うみ)()()んで()んでしまったという(はなし)もあるそうな。

 
※この話の参考とした話
奄美・鹿児島県大島郡徳之島町亀津~『徳之島の昔話』
奄美・鹿児島県大島郡伊仙町佐弁~「徳之島採集手帖」十


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●伝承地
奄美・鹿児島県大島郡徳之島町亀津~奥山にマツバンタというところがあった。そこにマツバンという人が住んでいた。山の奥に自分一人で住んでいたので、村の人々はそんなものが住んでいるというので、こわがって誰も其処を通る人がいなくなった。あるとき、尾母の人が薪(たむん)拾いに女三人連れて、そういうこわい所とも知らずに其処に行って、それにみつかってしまった。そこで、村の上までずーっと追われて来たそうな。丁度、亀津に行く道と尾母に行く道との分れ道であるが尾母へ行く道の方へその人達は逃げ走っていった。百米くらいの距離まで追いつめられていたが、その道に鳩が来て止ったので、此の道には行ってないといってマツバンは引きかえしたので、その人達はあやうく命たすかったが、余り息せききって走ったために村に着きは着いたが息きれて死んでしまったという。マツバンというのは山奥に田を作り、立木で臼などを作って、米など自分でついて食べたりしていたが、夜々は村に下りて来て人の牛・馬や鶏など盗みとったりしていたという。それが神様のようなものであった。村が尾母に別れた時、尾母の村中の人達で追ったところがクレジュンという所まで追われていって、そのまま海に飛んでしまったらしい。マツバンといって名をうっているものはそんなものであったらしい。(『徳之島の昔話』)
奄美・鹿児島県大島郡伊仙町佐弁~十一月、十二月の夜に山の神が嶺伝いに下ってくるといい、徳之島町と伊仙町の境の本川の傘石の下で漁師が二人仮眠していた。そこに神が通りかかった。一人の漁師は褌をかぶり神の通過を待った。一人はそのままふるえながら神をみていた。褌をかぶった漁師はどうもなかったが、もう一人は寒気と高熱をだし翌日に死亡した。(「徳之島採集手帖」十一)


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