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~琉球沖縄に伝わる民話~
新訳『球陽外卷・遺老說傳』第36話
豊見氏親の鯖退治
遠い古の昔、宮古郡伊良部の邑主、豊見氏親は、腕力が並外れて強く武術に優れて勇ましいことが並外れていました。
この時、平良の海の中に、一匹の大きなフカがよく出現し、往来する舟を転覆させ、そして人々を貪り食うことがありました。
人は皆、酷くこのフカを恐れて、宮古島と伊良部島の間を全く往来しなくなってしまいました。
豊見氏親は、まさにそれを憂えました。
直ぐに短剣を携え、たった独りで小舟の中にすわると、その海に出掛けて行きました。
すると大きなフカが海から躍り出てきて、そして飲み込もうとしました。
すると豊見氏親は、海中に飛び込み、結局死闘の末にフカの口より体内に入り、フカの腹の中を切破り、そして裂いて外に出る機会を得て、それから泳いで岸に上って家に帰りました。
しかしながらしばらくすると、惨めな死に様のまま息を引き取ってしまいました。
人々は皆、豊見氏親のことを心から感謝し、また憐れんで、比屋地山に葬りました。
そして遂にそこは尊ばれて神嶽とされ、そして祭祀が執り行われるようになりました。
※注や解説
【往古】~古くは「おうご」とも。往昔。往昔過ぎ去った昔。大昔。遙か昔。昔々。古。
【宮古伊良部邑】~宮古郡下地間切伊良部邑。伊良部島の村。「邑」は「村」に同じ。
【豊見氏親】~「とよみうじおや」→「とよむうつうや」。「うずぬしゅう/とよむぅずのしゅ/とよむうじおや」とも。人名。目黒盛豊見親の子孫で、普佐盛豊見親の孫である。
【膂力】~ 筋肉の力。また、腕力。
【絶倫】~技量などが、並外れて優れていること。また、その様。抜群。
【武勇】~強く勇ましいこと。武術に優れて勇ましいこと。
【非常なり】~形動動詞。並の程度でないさま。はなはだしいさま。
【海中】~「わたなか・わだなか」とも。海の中。また、海の真ん中。
【鯖魚】~「ふか/鮫」のこと。「ふか」のことを琉球沖縄関連では「鱣」、宮古では「鯖」と書き表わすのが例となっている。また鮫」は関西以西では「ふか」、山陰では「わに」と呼ぶことがある。
【一】~一匹とした。一般的に尾びれのついた魚すべての数え方は「匹」や「尾」で、大型魚は「本」であるが厳密に使い分けされてきたわけではない。
【覆湮】~転覆させる。「覆」は、ひっくり返る、くつがえす、の意。「湮」は、沈む、ふさぐ、の意。
【呑食】~貪食、の意。貪り食うこと。
【深く】~非常に、酷く、心の奥底から、の意。
【畏懼】~おそれはばかること。恐懼。「畏」も「惧(懼)」も恐れる、の意。
【敢て】~後に打消の語を伴って、必ずしも、の意。また、後の打消を強めて、少しも、全く、の意。
【憂恤】~憂える。心配する。
【以て】~(漢文における「以」や「式」の訓読から生じた語)。そして。(それ)によって。(それ)について。(それ)をもちいて。(多く「…をもって」の形で格助詞のように使用して)・・・・・・て。・・・・・・で。・・・・・・でもって。・・・・・・によって。・・・・・・の理由で。・・・・・・により。・・・・・・に。・・・・・・の上に。・・・・・・に加えて。・・・・・・の上に。・・・・・・かつ。・・・・・・しながら。「将ふるに貫玉を以てし、」は、日本語の語順では貫玉について将ふるの意。
【呑去】~「呑」は「飲」に同じ。「去」は、取り除く、取り去るの意。貪り食うこと。
【腹中】~腹の中。
【切破る】~切破る。切って裂け目や穴をあける。
【而して】~「而して」「而して」から転じたもの。漢文訓読に用いられた語。そうして、それに加えて、の意。
【頃刻】~しばらくの時間。暫時。
【斃死】~行き倒れて死ぬこと。野垂れ死に。また、それに似た惨めな死に方。
【拝謝】~礼を言うことを謙っていう語。心から感謝すること。
【憐憫/憐愍】~「憐愍」とも。かわいそうに思うこと。憐れむこと。憐れみ。
【比屋地】~地名。
【祭祀】~神々や、祖先などをまつること。祭典。祭儀。まつり。
【原文】往古之時宮古伊良部邑主豐見氏親膂力絶倫武勇非常此時平良海中有出一大鯖魚覆湮往來之舟以爲呑食人皆深畏懼之不敢往來矣豐見氏親亦爲憂恤即携短劍獨坐小舟出行其海大鯖躍出要以呑去氏親飛入海中遂入鯖魚之口切破其腹中以得割出於外而上岸歸家頃刻之閒身亦斃死人皆拜謝之亦憐憫之葬之於比屋地山遂尊爲神嶽以爲祭祀焉
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ルミさん、はいさい、今日、拝なびら。
むかし、この話を知って、
以前、これをブログで書いてから、
昨年の8月に、宮古周辺を訪ね、
僕も実際にルミさんのように、
平良から船に乗って、佐良浜港への短い船旅は感無量でした。
なお、長い橋が建造中で、
やがて、船の体験と感覚が、なくなってしまいますから、
ルミさんも僕も、いい船の経験をした事になります。
伊良部には、豊見氏親の銅像が建っていましたよ。
また、天候が急変して、近くの牧山展望台に、避難したのですが、
まさに、この話の舞台が、眼下に広がって壮観でした。
豊見氏親は、まさに命をかけて人食いフカを 退治した ヒーローです。
腹に入ったかどうかは、もしかすると誇張か、本当なのかも知れませんが、
大きなフカと格闘して、その時の怪我で、命を落としたと、民話にはあります。
道具も、ろくに無かった時代、大した人物ですね。
宮古は、またぜひ行ってみたい地方です。
特に、美人が多かったし(笑)
横浜のtoshiさん
こんばんは
宮古島と伊良部島
今では、定期船がひんぱんに行き来して
地元の足(船、バスみたい?)で生活になくてはならない 大切な船ですね。
毎日船で 学校に通う高校生もいます。
私もそんな船に乗ったことがありますが
(10年前?)
波が高いと揺れて
怖かったです
もし、海に落ちたら~
昔は、大きなフカ(人食いサメ) が怖かったんですね~
豊見氏親は
命をかけて人食いフカを 退治した ヒーロー?
フカのお腹に入った?…
フカと格闘そして
咬まれてダメージを受けた?
本当にあったお話なんでしょうね~
いろいろ想像しながら 読ませていただきました。
ありがとうございます。
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