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~琉球沖縄に伝わる民話~

新訳球陽外卷(きゅうようがいかん)遺老(いろうせつでん)』第39話

(ふた)つの霊石(れいせき)




 (とお)(いにしえ)時代(じだい)宮古(みやこ/みゃーく・)( ぐん・)多良間( たらま・)(じま)塩川(しゅがー/すがー・)(そん)(たみ)であった張間玉茶良(はりまたまちゃら)は、ある()のこと、神名真(かみなま)という土地(とち)()って、田畑(たはた)(たがや)している(とき)のことですが、突然(とつぜん・)二塊(ふたかたまり)(おお)きな(いし)が、張間(はりま)という土地(とち)飛来(ひらい)するのを()ました。
 玉茶良(たまちゃら)は、たいそうこれを不思議(ふしぎ)(おも)って、結局(けっきょく・)(むら)人々(ひとびと)(はな)して一緒(いっしょ)相談(そうだん)()い、()ちた(いし)四方(しほうを)に、樹木(じゅもく)(たけ)()えて、この()(はい)って(ひと)にむやみやたらと(けが)させないようにしたのでした。
 その()霊神(れいじん)がこの(いし)(うえ)出現(しゅつげん)することがあって、それで人々(ひとびと)(くに)平安(へいあん)(たみ)(まも)(かみ)とするようになりました。
 これより(のち)村中(むらじゅう)(ひと)は、毎年(まいとし・)(かなら)五穀(ごこく)初物(はつもの)をこの(かみ)にお(そな)えして、拝礼(はいれい)(おこな)うようになったのでした。



 
※注や解説

往古(おうこ)】~(ふる)くは「おうご」とも。往昔(おうせき)往昔(おうじゃく)()()った(むかし)大昔(おおむかし)(はる)(むかし)昔々(むかし)(いにしえ)
宮古(みやこ/みゃーく・)(やま)塩川(しゅがー/すがー)(そん)】~宮古(みやこ/みゃーく・)(ぐん・)多良間(たらま・)(じま)塩川(しゅがー/すがー・)(そん)宮古(みやこ・)(やま)の「山」は、(しま)、の()。なお宮古(みやこ)(べつ)に「麻姑山(まこさん)太平山(たいへいざん)」とも。『宮古島由来記』には、「塩川(しゅがー/すがー)御嶽(うたき/おたけ)多良間(たらま・)(じま)にあり、神名は「遊ビカゲハベルカゲアルス」と唱ふ。神代の時、塩川村の百姓「ハリマ玉チヤラ」という人が、畠に出て耕していると、神名真という所に、大きい石が二個あって「ハリマ」という所へ飛び越え行くのを見て、神霊の所為であるとし、これを祭って塩川村の守護神とした云々」、とある。
張間玉茶良(はりまたまちゃら)】~人名(じんめい)
神名真(かみなま)】~地名(ちめい)神名真地(かんなまぢ)
田野(でんや)】~()野原(のはら)田畑(たはた)野原(のはら)。 また、田舎(いなか)
耕耘(こううん)】~雑草(ざっそう)()(のぞ)いて、田畑(たはた/でんぱた)(たがや)すこと。(たがや)して作物(さくもつ)(つく)ること。農作(のうさく)すること。農耕(のうこう)。「耘」は(くさ)()るの()
忽/便/倏(たちま)ち】~非常(ひじょう)(みじか)時間内(じかんない)動作(どうさ)(おこな)われるさま。()ぐ。即刻(そっこく)(またた)()。あっという()(にわか)に。(きゅう)に。(すみ)やかに。(おお)くが「たちまちに」の(かたち)で)(げん)に。(たし)かに。まさに。ただ(いま)。「()()ち」の()から派生(はせい)した()
二塊(ふたかたまり)】~(ふた)つの(かたまり)
大石(おおいし/たいせき)】~(おお)きな(いし)
飛来(ひらい)】~()んで()ること。
奇異(きい)】~普通(ふつう)様子(ようす)(ちが)っていること。不思議(ふしぎ)なこと。また、そのさま。普通()わっていて(みょう)であること。また、そのさま。奇妙(きみょう)
(つい)に】~「(つい)に」「(つい)に」とも。ついに。とうとう。しまいに。結局(けっきょく)最後(さいご)に。()わりに。また(「(つい)ぞ」に(おな)じで)、(いま)までに一度(いちど)も。(いま)(かつ)て。
邑人(むらびと)】~「邑」は「村」に(おな)じ。村人(むらびと)
相共(あいとも)に】~一緒(いっしょ)に。共共(ともども)
商議(しょうぎ)】~相談(そうだん)()うこと。協議(きょうぎ)評議(ひょうぎ)
四囲(しい)】~四方(しほう)から()(かこ)むこと。まわり。周囲(しゅうい)
竹木(ちくぼく)】~樹木(じゅもく)(たけ)樹木(じゅもく)だけでなく(たけ)(ふく)まれることを(あき)らかにしようとする場合(ばあい)(もち)いられる()
栽植(さいしょく)】~「植栽(しょくさい)」とも。草木(くさき)()()てること。
漫瀆(まんとく)】~「漫」は、むやみやたらと、の()。「漫」は、けがす、の()
霊神(れいじん/れいしん)】~霊験(れいげん)(あらた)かな(かみ)御利益(ごりやく)(いちじる)しい(かみ)をいう。
(もっ)て】~(漢文(かんぶん)における「以」や「式」の訓読(くんどく)から(しょう)じた())。そして。(それ)によって。(それ)について。(それ)をもちいて。((おお)く「…をもって」の(かたち)格助詞(かくじょし)のように使用(しよう)して)・・・・・・て。・・・・・・で。・・・・・・でもって。・・・・・・によって。・・・・・・の理由(りゆう)で。・・・・・・により。・・・・・・に。・・・・・・の(うえ)に。・・・・・・に(くわ)えて。・・・・・・の(うえ)に。・・・・・・かつ。・・・・・・しながら。「(つた)ふるに貫玉(ぬきだま)(もっ)てし、」は、日本語(にほんご)語順(ごじゅん)では貫玉(ぬきたま)について(つた)ふるの()
護国(ごこく)】~(くに)平安(へいあん)(まも)ること。
庇民(ひみん)】~(うえ)から(おお)うようにして(まも)る。(かば)う。
五穀(ごこく)】~五種類(ごしゅるい)穀物(こくもつ)(てん)じて穀物(こくもつ)(るい)総称(そうしょう)にも使(つか)う。五種類(ごしゅるい)穀物(こくもつ)とは、通常(つうじょう)は、(こめ)(むぎ)(あわ)(きび)(まめ)をいうが、その内容(ないよう)については(むかし)から(かなら)ずしも一定(いってい)していない。
(すす)め】~ここでは、お(そな)えする、献上(けんじょう)する、の()
拝礼(はいれい/はいらい)】~(あたま)()げて(れい)をすること。(おが)むこと。
【原文】往古之世宮古山塩川邑之民張閒玉茶良一日往神名眞地耕耘田野之時忽看二塊大石飛來張閒之地玉茶良深奇異之遂與邑人相共商議四圍栽植竹木不使人漫涜之也後有靈神出現于此石上以爲護國庇民之神自此之後邑中之人毎年必薦五穀之初以行拜禮焉


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ジルバさん、はいさい、今日、拝なびら。

URLは、クリックではなく、コピー&ペーストで、開けないでしょうか。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2012年12月18日 05:06


横浜ジルバさん、追加です。

琉球沖縄の身分制「位階」について
http://totoro820.ti-da.net/e3575293.html

ここで、琉球時代の身分について、少し触れました。

琉球時代、「系図座」があり、
もしも先祖が士族の出身でしたら、
実は、割と簡単に、系図は調べられると思います。
もちろん、王族もです。

しかし琉球時代の、大部分の人、つまり、平民(※百姓といいます)は、
系図がありませんので、遡ることは、まず無理です。
言い換えれば、明治以降しか、わからない筈です。
では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2012年11月27日 05:00


横浜ジルバさん、はいさい、今日、拝なびら。

前回のコメントですが、
その前に、コメントを頂いて、お返事を書いたところ、
なぜか、同じ内容が2つアップされてしまったので、
1つを削除するつもりが、2つとも削除してしまいました。

ショックで直ぐ書き直す気が起きず、
改めて、翌日、書いたコメントになります。

おっしゃる通り、彦さんは麻氏の家系で、
常連のお客さんから、麻氏門中のあゆみという系図を頂いたという記事を、
今年の2月に、ご自身のブログで、書かれていました。
再度、確認したところ、2012年2月12日の記事です。

それから、以下、「琉球家譜目録データベース」検索を、
思い出しましたので、記載しておきます。http://www.geocities.jp/ryukyu_history/ryukyukafu/kahu_project.html

また、球陽出版も、何かの役に立つかも知れません。
http://kyuyou-shuppan.com/fimily_org.html

では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2012年11月27日 04:45


門外不出へのご意見、わたくしも同感です。ありがとうございます。
Posted by 横浜ジルバ at 2012年11月26日 19:21


横浜のtoshi さん、こんばんは(^-^)
情報ありがとうございました!

儀間さん、商事会社の同期に同じ名字の仲良しがいました。結婚して、名字かわっていますが、麻氏が儀間さんに繋がるとは面白いです(*^^*)

ケントミCDの作曲家のだんぱち彦さんが、麻氏の子孫だそうです。ブログにかいていらしたので、きょうみが湧いた次第です。
Posted by 横浜ジルバ at 2012年11月26日 19:14


横浜ジルバ様、はいさい、今日、拝なびら。

麻氏(まーし/まうじ)については、よく聞く名ですが、
血族や血筋は、専門外なので、よくわからないんです。
麻氏大宗家の系統の、儀間真常ぐらいしか、思い当たりません。

調べたい目的がよくわからないのですが、
『沖縄大百科』『沖縄門中大事典』あたりから、調べてはいかがでしょうか。
次が、与儀にある、県立沖縄図書館あたりが、調べるのにいいかも知れません。

門外不出の政事を、公開する、公開しない、という点は、
どちらの意見も、よく分かり、どちらにも賛成であり、反対でもあります。

ただ先祖から伝わってきた、よい伝統は、子孫に伝えなければならない、
それは間違いのないところで、正しく伝承されなければ、意味がありません。
では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2012年11月26日 18:19


ちなみに、沖縄ブームが起こる前に、多良間島の豊年祭が国立劇場の招待を受けて大盛況でした。

けれども、門外不出の政(まつりごと)を出すとは何事かっ!と怒る関東在住の宮古島の方も多数おりました。
8歳の頃に体験した本土復帰の時の大人達の”顔の表情”を思い出しました。

わたしは、いつも、なぜだか、”歴史(人々の営み)の目撃者”に立たされます。(いえ・・・、立たせていただいております。)
Posted by 横浜ジルバ at 2012年11月25日 21:10


こんばんは(^^)

いつも楽しく拝見させていただいております。
ところで、麻氏(まーし)についての記事はおありでしょうか?

もしも以前にも同じ質問していたとしたらごめんなさい(ペコリ)

よろしくお願いします。
Posted by 横浜ジルバ at 2012年11月25日 21:04


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