てぃーだブログ › 琉球沖縄を学びながら、いろいろ考えていきたいな~ › 新・琉球民話・口碑伝説集 › 嘉手志川の金屏風~新・琉球民話・口碑伝説集第14話

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~琉球沖縄に伝わる民話~

新・口碑伝説民話集録
『琉球民話集』より、第14話


嘉手志川(かでしがー)金屏風(きんびょうぶ)



 むかし、大里(おおざと)一帯(いったい)大旱魃(だいかんばつ)()って、人々は(のど)(かわ)きに苦しみました。
 海の中に水が出る所があり、舟人(ふなびと)が舟で水を取りに行こうとした時、()たして一疋(いっぴき)の犬が、びしょ()れになって山の中から出て来たのでした。
 不審(ふしん)に思った舟人(ふなびと)は、その犬を連れて山の中に入って行きました。驚いたことにそこには池があり、綺麗(きれい)真水(まみず)滾々(こんこん)(あふ)れ出しています。
 ところがそこに()くなり、犬は水の中に飛び()んだかと思う()もなく、一瞬(いっしゅん)(たちま)ち石になったのでした。
 さて、水源(すいげん)が見つかって、大層(たいそう)(よろこ)んだ村人達(むらびとたち)はこの川から水を()むようになり、その後、どんな旱魃(かんばつ)の時でもまったく不自由することがありませんでした。
 そしてここは嘉手志川(かでしがー)名付(なづ)けられ、石になった犬は周囲(しゅうい)石垣(いしがき)()(めぐ)らされ、神として村人達(むらびとたち)から大切(たいせつ)(まつ)られるようになりました。
 それからずっと後のことです。
 佐敷小按司(さしきのこあんじ)は、世にも(めず)らしい金の屏風(びょうぶ)を持っていました。島尻大按司(しまじりおおあんじ)は、それをとても()しがって、とうとう嘉手志川(かでしがー)と金の屏風(びょうぶ)を取り()えてしまいました。
 それから佐敷小按司(さしきのこあんじ)は、自分に(したが)う者だけに川を使わせたため、農民(のうみん)はじめ人々は島尻大按司(しまじりおおあんじ)(あき)()て、()りつかなくなりました。()わりに段々(だんだん)小按司(こあんじ)の言うことを聞くようになって、やがて大按司(おおあんじ)(つい)小按司(こあんじ)によって(ほろ)ぼされてしまいました。

 
※注や解説

嘉手志川(かでしがー)】~三山(さんざん)時代、南山(なんざん)繁栄(はんえい)(ささ)えた泉とされる。なお、南山(なんざん)には、島添(しまぞえ)南山(なんざん)(グスク)(※島添大里城とも)島尻(しまじり)南山(なんざん)(グスク)(※島尻大里・高嶺城とも)がある。この話の南山城とは島尻南山城のこと。島尻南山城跡近く糸満市大里集落内にあって豊富な水量を誇る湧き水が出ることで嘉手志川(かでしがー)は有名である。先に述べたように南山(なんざん)(グスク)は二つあり、共に南山(なんざん)歴史(れきし)において重要な役割りを担った城である。
大里(おおざと)】~以前の発音は「うふざとぅ/うふじゃとぅ」など。
旱魃(かんばつ)】~(ひでり)。特に、農作物に必要な雨が長い間降らないこと。
佐敷小按司(さしきこあんじ)】~中山王(ちゅうざんおう)尚巴志(しょうはし)尚巴志(しょうはし)は父と共に、三つに分かれていた沖縄本島を統一して琉球國を建国し、第一尚氏王統を建てた人物。。琉球國第一尚氏王統第二国王(一三七二~一四三九/在位一四一二~一四三九)(※特に明国への対外的には父に続いて第二国王であり、琉球國国内的には初代国王)
島尻大按司(しまじりおおあんじ)】~南山王他魯毎(たるみい/たるみー/たるまい)(一四一五~一四二九汪応祖(おうおうそ)王の子。南山最後の王。なお「他魯毎」は人名ではなく、「太郎」に接尾敬称辞「思い(もい)」がついた「太郎思い(たるもい)」の漢字表記。


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