てぃーだブログ › 琉球沖縄を学びながら、いろいろ考えていきたいな~ › 新・琉球民話・口碑伝説集 › 竈神祀り~新・琉球民話・口碑伝説集第28話

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~琉球沖縄に伝わる民話~

新・口碑伝説民話集録
『琉球民話集』より、第28話


竈神(かまどがみ)(まつ)



 旧暦十二月二十四日は、竈神(かまどがみ)(まつ)る風習が、琉球沖縄では古くから行われてきました。
 (かまど)を修理し、白紙を三枚重ねて真ん中で折り、上から四等分して切った、上の三組を()いて、それぞれに御飯(ごはん)(※うぶく)()せます。線香七本(※七つの天があるという言い伝えから始まる)を天に(のぼ)る階段状に見立てて、左から右に上がるように立て、家中(かちゅう)平穏無事(へいおんぶじ)を祈ります。
 これは、道教(※老子の教え)から来た風習で、そのことについて次のような言い伝えがあります。
 天地には司過(しくわ)という神様がいらっしゃって、三尺虫(さんしちゅう)や、竈神(かまどがみ)(※ヒヌカン)を使って人の罪状(ざいじょう)を調べ、罪が重い者は三百日、軽い者は三日と、その寿命を(うば)い取り、反対に善を積んだ者は寿命を増やすといいます。
 三尺虫(さんしちゅう)は、人間の体内に()んでいて、六十日目ごとに、(かのえ)(さる)昇天(しょうてん)して、人の過失(あやまち)を神様に報告しますが、その時に(かまど)の煙で天に(のぼ)るとされています。また三尺虫(さんしちゅう)は、人間が生きている時はその体の中に()んでいるものの、人が死ぬと体から出て自由に空中を飛び歩き、(また)、新たに生まれた人の体に(もぐ)()むといわれています。
 いずれにせよ、善行(ぜんこう)悪行(あくぎょう)正確(せいかく)(さぐ)り出して神に報告するのが役目だということです。

 
※注や解説

竈神(かまどがみ)】~火の神であると同時に農業や家畜や家族を守る守護神(しゅごしん)として、全国的によく知られている神。大掃除(おおそうじ)一環(いっかん)として、十二月二三日に(かまど)掃除(そうじ)して竈神(かまどがみ)(まつ)る習慣は、(かまど)があった一九六〇年代まで日本全国の地方(ちほう)でよく行なわれていた。日本の仏教では、尊像(そんぞう)三宝荒神(さんぽうこうじん)が、竈神(かまどがみ)として(まつ)られることで知られる。それは清浄(せいじょう)(たっと/とうと)んで不浄(ふじょう)(はい)する神ということから、火の神に(つな)がったと考えられている。一方、日本神道では三宝荒神(さんぼうこうじん )ではなく、竈三柱神(かまどみはしらのかみ)を、(かまど)厨房(ちゅうぼう)や台所に(まつ)る。日本建築の住居空間における(かまど)は、座敷(ざしき)などと比べて暗いイメージがあることから、影や裏の領域(りょういき)霊界(れいかい)(※他界(たかい)現世(げんせ/げんぜ/げんせい/うつしよ)との境界(きょうかい)を構成する場所として、竈神(かまどがみ)を両界の媒介(ばいかい)秩序(ちつじょ)更新(こうしん)といった役割を持つ両義的(りょうぎてき)な神とする考え方もある。なお、性格が激しい神とされるため、この神を粗末(そまつ)(あつか)うと大きな(ばち)が当たる、(かまど)に乗ると竈神(かまどがみ)が怒る、人に(たた)りを(およ)ぼすといった伝承も多い。
【旧暦十二月二十四日】~沖縄など琉球諸島では、旧暦の十二月二十四日は、「ウグヮンブトゥチ(御願解き)」と、「ヒヌカンの昇天(しょうてん)」を行う日として、よく知られている。「ヒヌカン」とは沖縄方言「火の神」で、広く一般的に家の守護神として信仰(しんこう)される存在。どこの家でも台所に(まつ)られ、女性が守るものとして、今も琉球諸島の人々の暮らしには()かせない存在。しかしながら元々は、一家の男の(あるじ)が祭事を行っていた。また古くは、(かまど)の後ろに置かれた三個の石を御神体(ごしんたい)としたが、現在はウコール(※香炉(こうろ)がそれに()わっている場合が殆ど。一般家庭では、旧暦の一日と十五日に「うぶく(※御飯)」などを、お(そな)えする。かつては、家庭でのヒヌカンの(ほか)に、琉球國全体で(まつ)ったヒヌカンや、地域で信仰されるヒヌカンもあり、それらは最高神とされた。琉球諸島では、旧暦十二月二十四日はヒヌカンが天に戻り、その家庭の一年間の功罪(こうざい)を報告する日とされる。そこでこの日は、()屋敷(やしき)御願(うぐゎん)を行い、ヒヌカンや屋敷神に一年の感謝(かんしゃ)(ささ)げる。それから「ウグヮンブトゥチ(御願解き)」と「ヒヌカンの昇天(しょうてん)」を行う。「ウグヮンブトゥチ(御願解き)」では、一年間に成就(じょうじゅ)した事や(さいわ)いに対して感謝し、逆に不幸な事や(わざわ)いに対して、それが解消するように願って反省する。そしてヒヌカンが、よい事だけを天の神様に報告するようにとお願いする。かつては、「シディガフー(孵果報)」や「ウグヮンブトゥチ(御願解き)」は、別の日に行われていた。それが同じ二四日に行われるようになったのは、簡素化(かんそか)によるもの。「シディガフー(孵果報)」とは、御願(ウガヮン)を立てた事に対して果報(かほう)(※命ある幸せを願う言葉「ぬちがふぅ(命果報)」が有名)を与えて下さった事に対するお礼で、果報(かほう)(さいわ)いな事があった時に行う。「ウグヮンブトゥチ(御願解き)」の前に、一年間無事に過ごせたお礼に、その年に御世話になった神々の拝所(うがんじゅ)や宮や寺を廻って、感謝の祈りを行う。このことを「1年のシディガフー(孵果報)」と言い、今でも例えば「首里の十二ヶ所巡り」(※寺回り(てらまーい)とも。十二は干支(えと)からきていて、五つの寺で祀られている。順に回るのではなく、干支の寺を回る。例えば、その年の干支の寺を回るとか、自分や家族の干支の寺を回る。干支(えと)十二支のウカチミ(本尊)が祀られている首里の五つの寺とは、慈眼院(※首里観音堂)、万松院、達摩(だるま)寺(※西来院)、安国寺、盛光寺)で感謝の御願(うぐゎん)をするのが昔からの普通の方々の習慣の一つ。「シディガフー(孵果報)」、「ウグヮンブトゥチ」が()んで清らかになったところで、いよいよ「ヒヌカンの昇天(しょうてん)」が行われる。


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