101鏡の霊神(かがみのれいしん) ~琉球沖縄の民話

横浜のトシ

2010年08月04日 20:20


~琉球沖縄に伝わる民話~

『球陽外巻・遺老説伝』より、第101話。


鏡の霊神(かがみのれいしん)


 読谷山(よみたんざん)にある窟(いわや)の中に、二つの鏡があり、土地の人は、昔からこれに神霊(しんれい)が宿(やど)るとし、崇(あが)め奉(たてまつ)ってきました。
 昔、一人の旅商人がこの話を聞き、舟でこの地にやって来(き)て、密(ひそ)かに鏡を盗(ぬす)んで、何食(なにく)わぬ顔をしていました。勿論(もちろん)、早く此処(ここ)を去らないといけないとは思うものの、順風(じゅんぷう)を待っているのに、一日待ち、二日と待ち続け、遂(つい)に、半月、一月が過ぎてゆきました。
 当然のこと、旅商人は、人知れず、自分が悪いことをした神様の罰(ばつ)だと、とても悔(く)いたのでした。そしてある日のこと、鏡を元の場所に返しに行き、心から神様に謝(あやま)ったのでした。
 そして舟に戻(もど)ると、不思議なことに、忽(たちま)ち海が凪(な)ぎ、順風となって、商人は勇(いさ)んで船の帆(ほ)をあげ、帰路(きろ)は慈(つつが)なく、帰って行きました。それからは心を入れ替えて真面目になり、信仰も厚(あつ)くなったとのことです。


※註
~『琉球国由来記』には、読谷山の瀬名波に「カガミ瀬嵩」があり、神名は「テルカガミノ御イベ」といい、三月、八月に、四度の礼拝が行われるとある。
 
※注
【読谷山】(よみたんざん)読谷山間切(まぎり))。現在の読谷村(よみたんそん)。読谷山の以前の発音は「ゆんたんざ/ゆんたんじゃ」など。


Posted by 横浜のtoshi

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