131箕の洞窟(みのどうくつ) 〜琉球沖縄の民話
〜琉球沖縄に伝わる民話〜
『球陽外巻・遺老説伝』より、第120話。
箕の洞窟(みのどうくつ)
小禄(おろく)間切、儀間(ぎま)邑の西の、岩山(いわやま)の上に、樹木(じゅもく)が生(お)い茂(しげ)った山があります。
その麓(ふもと)には、箕(み)に似た洞穴(どうけつ)があります。そこは、深く、そして広く、とても厳(おごそ)かな雰囲気があって、神様がいらしゃるような聖域(せいいき)です。
ある人が、何時(いつ)からともなく「正観音像」を奉安(ほうあん)して信仰(しんこう)するようになりました。
霊験(れいげん)あらたかで、お祈りすると、必ず願いが叶(かな)いました。
また近世になって、薩摩の船人達が費用を喜捨(きしゃ)して拝殿(はいでん)を建てました。
その後には「ビズル」という霊石(れいせき)も、そこに奉(たてまつ)られました。
残念なことにその拝所(うがんじゅ)は、今ではそれ程(ほど)参詣(さんけい)する人もなく、大層(たいそう)寂(さび)れてしまったとのことです。
※注
【小禄】(おろく)小禄の以前の発音は「うるく」など。
【儀間】(ぎま)の以前の発音は「じーま」など。
【邑】(そん)邑=村。
【箕】(み/き)米糠(こめぬか)チリを選(え)り分ける道具。 農具の一つ。「箕裘(ききゅう)」とも。なお米糠とは、玄米(げんまい)を精白(せいはく)する時に出る外皮(がいひ)や胚(はい)の粉。
【厳かな】(おごそかな)「立派で厳かな」の意の「荘厳(そうごん)」から派生した言葉。漢字「荘」「厳」は、いずれも「おごそかにきちんと整える」の意。荘厳は、一般には「そうごん」で、仏教では「しょうごん」。
【奉安】(ほうあん)尊いものをつつしんで安置すること。
【霊験あらたかで】(れいげんあらたか)神様のご利益(りやく)が直ぐに現れるといった意。
【喜捨】(きしゃ)惜(お)しむ心なく、喜んで財物(ざいぶつ)を施捨(ほどこし)すること。施(ほどこ)しは、仏・法・僧の三宝を守るためでもあり、また財物に対する執着(しゅうちゃく)や物欲(ぶつよく)から離脱(りだつ)させる意味がある。
【拝殿】(はいでん)神社の本殿(ほんでん)前にあり、祭典(さいてん)が行われたり、参拝者(さんぱいしゃ)が拝礼(はいれい)を行う殿舎(でんしゃ)。
【拝所】(うがんじゅ)沖縄で神を拝(おが)む場所。神が辿(たど)り着いたとされる岬なども指す場合もある。うがん。
Posted by 横浜のtoshi
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