117化け物(ばけもの)に負けた男 ~琉球沖縄の民話
※昨日は、自分の生誕を呪って、いや違った、お祝いして、朝夕2回、お送り致しました。 もののけシリーズは完結! ウートートー、サリ、アートートー。 それにしても沖縄が恋しい~。 あれ? ということは沖縄のどこかに、マブイ落としてきたか! 僕のマブイ見ませんでしたか? 落ちてたら拾っておいてくださ~い。
祝
興南高校
夏の甲子園・沖縄県初優勝の快挙!
横浜高校に次いで、
春夏連覇の快挙!至上6校目!
おめでとうございます!
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~琉球沖縄に伝わる民話~
『球陽外巻・遺老説伝』より、第117話。
化け物(ばけもの)に負けた男
むかし、真壁の宇江城邑に、久嘉喜鮫殿(くがきさめどん)という男がいました。
ある夜のこと、いつものように一人で魚を釣(つ)っていたところ、一人の男がやって来て、自分と同じように魚を釣り始めました。見たことがない男でしたが、何日も、そして何ヶ月も、夜毎(よごと)、同じ場所で魚を釣った二人は、段々(たんだん)、仲がよい友達になっていったのは、自然の成(な)り行きでした。
ところが実際のところ、鮫殿(さめどん)としては、仲が良くなってはいくものの、男が時々、言葉も様子(ようす)も、どうも変なところがあるのを見抜(みぬ)いていました。そしてやがて、この男は普通の人間ではなく、化け物(ばけもの)なのではないかと思えて仕方(しかた)なくなったのでした。
鮫殿は、思いました。
これからこのまま、永い間(あいだ)、この男と友達のままで、しかもこの男が化け物だったとしたら、もしかするとこの先、どんな危害(きがい)を加えられるかわからないと。
そこでまず鮫殿(さめどん)は、ある夜の、漁(りょう)の帰り際(ぎわ)、いつものように別れの挨拶(あいさつ)をした後、気付(きづ)かれないように注意しながら、密(ひそ)かにその男をつけて見ることにしました。
すると男は、村の外(はず)れにある、何百年も経(た)った古い桑(くわ)の老木(ろうぼく)のところで、突然(とつぜん)、すっと消えました。
鮫殿は、それを見ていて大変驚くと同時に、背筋(せすじ)を寒いものが走りました。
直(す)ぐさま、家に帰った鮫殿は、早速(さっそく)、詳(くわ)しく見た内容を、妻に話して聞かせたのでした。
そして話の最後、妻に言いつけたのでした。今晩、自分達が漁に出ている間に、その桑の老木を焼き払(はら)ってしまうようにと。
妻はその言いつけ通り実行し、老木を焼きました。
一方で、化け物は、漁から帰ってみると、自分の住み家(すみか)が焼けてなくなっています。仕方(しかた)なく、そのまま国頭地方に落ち延(の)びていきました。
それからというもの、鮫殿は、夜釣りに出掛(でか)ける度(たび)、たとえ化け物であったにせよ、友を失った淋(さび)しさを感じないこともありませんでしたが、やはり化け物と知った時の、身の毛がよだつあの瞬間を思い出しては、うまく追い払(はら)えてよかったと安心したのでした。
それから、何日か経(た)った、ある日のことです。
鮫殿は、首里に用事があって出掛(でか)けたのでした。その時に偶然にも、一人の友人とばったり会いました。
二人は久しぶりの再会を祝って、盃(さかずき)を傾(かたむ)けました。色々な四方山話(よもやまばなし)に花が咲き、ふと、鮫殿は、あの化け物の男の話、また男の住み家(すみか)の桑の古木(こぼく)を焼かせた話をした時のことです。
それまで楽しく飲んでいた友人の形相(ぎょうそう)が、突如(とつじょ)みるみる変わったかと思う間もなく、その友人は小刀(こがたな)で、鮫殿の指と指の間を刺(さ)したのでした。
鮫殿は、あの化け物が友人に化(ば)けているのが分からずに、この災難(さいなん)に会ったのでした。化け物は、ことの真相(しんそう)を突(つ)き止めようと、虎視眈々(こしたんたん)と、復讐(ふくしゅう)の機会(きかい)を狙(ねら)っていたのでした。
その傷のため、しばらくして鮫殿は死にました。
ところで、実は久嘉喜鮫殿(くがきさめどん)が、何故(なぜ)鮫殿(さめどん)と呼ばれていたかという、そのいわれですが、普通の人以上に、全身の皮膚が固く、また丈夫(じょうぶ)だったために、鮫肌(さめはだ)に喩(たとえ)られて、そう呼ばれていたのでした。但(ただ)し、指と指の間だけが唯一(ゆいいつ)、人の肌のようでした。化け物はそれを見抜(みぬ)き、指と指の間を狙い澄ませて、刀で突(つ)き刺(さ)したのでした。
※註
~たとえ相手が、化け物や悪人と知っても、むやみに危害(きがい)を加えると、災(わざわ)いが我が身に降り掛かるということを教える寓話(ぐうわ)的な民話である。年を経(へ)た老木には、キジムナーをはじめとする精霊(せいれい)が住んでいるという迷信(めいしん)は、今でもなお、広く沖縄や奄美といった各地に様々(ざまざま)な形で残っている。特に、今でいうところの金縛(かなしば)りの主な原因とされた。
※注
【真壁】(まかべ)真壁の以前の発音は「まかび」など。真壁間切(まぎり)。
【宇江城】(うえぐすく)宇江城の以前の発音は「うぃーぐすぃく/うぃーぐしく」など。
【邑】(そん)邑=村。
【国頭】(くにがみ)国頭の以前の発音は「くんじゃん」など。ヤンバルと言われ、深い森が多い。
【身の毛がよだつ】。恐ろしさや寒さのあまり、ぞっととして身の毛がさか立つように感ずること。身の毛も弥立(よだ)つ。身の毛立つ。
【虎視眈々】(こしたんたん)虎が、鋭い目つきで獲物をねらうさま。転じて、じっと機会をねらっているさま。
Posted by 横浜のtoshi
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