普天間権現と忘れ刀 ~琉球沖縄の伝説
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~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~
奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第185話。
普天間権現と忘れ刀
むかし昔、薩摩の国の、ある侍が、沖縄から国元に船で帰ろうとした時の事です。
風向きが向い風のために、どうも思わしくない日が四、五日も続いて、いくら待ってみたところで、少しも風まわりが良くなりません。
そんな時、侍は、普天間権現様は、願い事を叶えて下さる、いい神様だと聞いて、早速、権現に拝みに来ました。
この時代の船は、帆に風を受けて走る帆船のため、薩摩に向かう追い風に変えて下さいとお願いするために、祈願に来たわけです。
最初に、洞窟の中に入る時の事ですが、腰に刀を腰に差したまま、神様の前でお願い事をするのは失礼だと考えて、刀を手を洗う手水舎の所に置いて、洞窟の中に入って拝んだそうです。
拝んだ後、洞窟を出ると既に願い通り、風向きが薩摩に向かう風に変わっています。慌てた侍は、刀を忘れて馬の飛び乗り、そのまま那覇まで走って、ぎりぎりで船に乗り込み、そのまま国元に帰ったそうです。
その後、忘れられて刀は、ある人が見た時には、蛇に変わって逃げ出し、またある人には、その場所にある刀は見えないため、いつまでのその場所にあったそうです。
そして、やがて薩摩の侍が、希望した風を吹かせて下さった、お礼参りに来た時まで、刀は置いた場所にそのままあったそうです。
それからというもの、普天間権現の神様は、船旅の時に縁起が善い神様だという噂が広まって、航海に出る人は皆、旅の前に拝むようになったそうな。
※この話の参考とした話
①沖縄本島・沖縄県宜野湾市喜友名~『宜野湾市史』第五巻資料編四 民俗
②沖縄本島・沖縄県島尻郡渡嘉敷村阿波連~渡嘉敷村史別冊『とかしきの民話』
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●伝承地
①沖縄本島・沖縄県宜野湾市喜友名~薩摩の侍がね、沖縄から国元へ船で帰ろうとしたとき、風向が向い風でどうもおもわしくなくてね。んで二、三日か四、五日待っても風まわりがないので、「権現さんはいい神様だそうだから」と言って、普天間権現に拝みに来たそうだ。昔は帆前船だから、「風まわりを追い風に変えて下さい」と祈願に来たわけだ。んで、最初、洞窟の中に入るとき、腰に刀をさしたまま神様の前に入ってはいけないと思って、刀を手洗い水の所に置いて、中に入って拝んだんだ。ほんで、出てきたらもう風向が変わってしまっていたんで、刀をさすのを忘れて、そんまま馬を走らせて那覇に行って、そこから船でお国元に帰ってしまったそうなんだ。拝みおわって洞窟から出てきたら、もう急に風向が変わってしまっていたというんだな。 その後、この人が忘れていった刀は人が見たら蛇になって逃げたりしていたらしい。そんで、刀はそこにあることはあるんだが、人がそこから出入りしても気付かれずにいたんだ。だもんだから、その薩摩の侍が後日、お礼参りにきたときまで刀はちゃんとあったそうだ。それからは、普天間権現は船旅の時に縁起がいい神様だからいうて、皆な拝むようになったそうだ。こんなふうな話、それだけは聞かされた。(『宜野湾市史』第五巻資料編四 民俗)
②沖縄本島・沖縄県島尻郡渡嘉敷村阿波連~大和に行く人が忘れた太刀は、人が来るとハブになっていたので、そこを訪れた人がハブだといって叩いたりした。すると、その人が戻って来た時には、太刀は傷だらけになっていたという。(渡嘉敷村史別冊『とかしきの民話』)
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