てぃーだブログ › 琉球沖縄を学びながら、いろいろ考えていきたいな~ › 新・琉球民話・口碑伝説集 › 爬龍歌(ハーリー歌)~新・琉球民話・口碑伝説集第4話

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~琉球沖縄に伝わる民話~

新・口碑伝説民話集録
『琉球民話集』より、第4話


爬龍(ハーリー)


 (那覇の部)
今日のほこらしやや、なをにぎやなたてて、
 つぼで居る花の、(チユ)ちやたぐと
泊高橋になんじやジフア(ウト)
 いつが夜のあけて、とめてさすら
那覇の()る船の、豊見城(ティミグスク)(ヌブ)
 白鳥(シラトイ)がいちよん、白鳥やあらん、おみないおしぢ
七々(ナナ)兄弟(チョデ)そろて、そんぢやなしめでい
 いで立つる時や、さびやねらん
花たい里主(サトヌジ)花むいがいめね
 ()でて()(ワラビ)、取てや見どな


(久米の部)
今日のふこらしやや、なほにぎやな立てて
 つぶで居る花の、露ちやたぐと
久米(クニンダ)()る船の、豊見城登て
 豊年(ユガフ)()ぢ浮きて、ゆがほしでら
泊高橋にナンジヤジフア落ち
 いつが夜の明て、とめてさすら
久米(クニンダ)の村や、水ゆいがやゆら、
 ちゆらさ若者の()だる(チュラ)

一、三隻龍船是弟兄     相胼相爬上豊城
二、仰瞻聖顔咫尺間     年豊民安楽太平
三、三隻龍船池中遊     彩童歌唱報隆恩
四、鳳凰台上鳳凰遊     天朝仁徳如海深
(はやし)也罹哩哩哢瀬

《読み》
一、サンキルン チュウ シ ティー シュン
   シャン ベン シャン パ シャン フーン チン
二、エン ニャン シンエン チ チ チェン
   ニェン フー ミン アン ロウ ターイ ピン
三、サン キ ルン チュウ エ チ チュン ユー
   チャイトン コウチャン パオ リュン ニェン
四、フン ハーン タイ シャン フン ハーン ユー
   テン チャウ ニン テェ ス ハイ シン
(はやし)エーローリー、イヤーリールーンライ


《 訳 》
一、三隻の龍船は兄妹のよう
   共に頑張り共に競争し豊城に上る
二、ごく間近に聖顔を仰ぎ見て
   豊年、平安、太平を祈る
三、三隻の龍船は池の中で遊び
   着飾ったわらべ達は歌唱して皇帝の恩に報い
四、鳳凰の台上で鳳凰は遊び
   天朝の人徳は海のごとく深い



(泊の部)
此の人数(ニンジュ)(スル)て首里加那志めでい
 出立(ンジタチユ)る時や、さびやねさめ
御盃(ウサカヂチ)でんし、拝ですでからや
 うちたゆいたゆい、御顔(ミユンチユ)(ウガ)
石なぐの石の、大石(ウフシ)なるまでん
 おかきぶせ(メショ)り、拝でしでら(又は「我御主加那志」)
()る船の豊見城(ティミグスク)(ヌブ)
 豊年(ユガフ)()ぢ浮きて走るが(チュラ)




 爬龍舟(はりゅうせん)由来(ゆらい)については、次のことが伝わっている。
 その昔、支那(しな)(※中国)屈原(くつげん)という、(とく)の高い人物がいた。汚濁(おだく)の世を悲しみ、「世俗(せぞく)(ちり)()もれて生きるより、魚の腹に(ほうむ)られ、その(とく)(まっと)うす。」と()んで、旧五月五日、「汨羅(べきら)(ふち)」に身を投げた。
 これを見た住民は、我れ先にと舟を飛ばして探し回ったものの、屈原を救うことが出来なかった。
 屈原の徳を(した)っていた住民は、悲嘆(ひたん)に暮れて、五月五日を記念して爬竜舟(はりゅうせん)競争を行い、屈原(くつげん)(れい)(なぐさ)めて(とむら)ったのが、いつしか各地に広まって、行われるようになったという言い伝えがある。


 
※注や解説

 中国の、()の国に、屈原(くつげん)という高潔(こうけつ)な人物がいた。屈原は、国王の側近(そっきん)として立派な政治を行い、国民からも敬愛(けいあい)されていた。しかしながら、それをよく思わない他の重臣たちによって、根拠(こんきょ)のない(うわさ)を流され、また国王にも告げ口されて、とうとう屈原は、国王から疎外(そがい)されてしまう。そして(みやこ)落ちした屈原だったが、国王の世を心配し、何度(なんど)となく国王に忠告したが聞き入れてもらえない。失意(しつい)の底に沈みながら、屈原は優れた詩を何遍も詠んだ。そして最後に「魚腹に(ほうむ)らるるとも何ぞ俗々の身を以て世の俗塵に染まん(※濁世に生きるよりは魚の腹中に葬られるほうが(いさぎよ)い)」と遺書(いしょ)を残すと、川の(ふち)身投(みな)げした。人々は、屈原の死を深く(いた)み、命日(めいにち)には米を詰めたお(そな)え物を川へ投げ入れて屈原を慰霊した。それが「ちまき」の始まりとされている。また命日に、爬竜船を浮かべて競漕したことがハーリーの始まりといわれている。


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仲本会長、いっぺー、にふぇーでーびる。

何しろ、実家に、拘束されたまま。
実家に帰宅したところで、何も出来ないまま、無駄な時間が過ぎ去るばかり。

資料も、何もないので、PC1台で出来る、訳し直しで、暇をつぶしております。
とほほ~
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2015年11月03日 11:42


爲井俊雄さんいつ読んでもいいものですね。ありがとうございます。
私はじめ沖縄には事なりを知らぬ方が多いと思います。
それこそが教育と思いました。
Posted by 仲本勝男仲本勝男 at 2015年11月03日 11:34


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