~琉球沖縄に伝わる民話~

『球陽外巻・遺老説伝』より、第75話。


平和の神(へいわのかみ)


 むかしむかし八重山の人々は、知恵がだんだんに発達して、住居も一定の決(きま)った場所に住むようになり、そこで生活をするようになっていきました。
しかし一方で、まだその頃は、神様を信心(しんじん)するということを、多くの者が知りませんでした。
 そして武力ある者は、その力(ちから)にものをいわせ、他人の財産や物品を奪(うば)ったり、勢力が強い者の中には、自分に力があるのをよいことに、人を害(がい)し、老人を悔(あなど)り、弱い者をいじめて、酷(ひど)い乱暴(らんぼう)ばかりする者までいました。
 その頃、長男、真種増瑞(またねましず)、二男、那他発(なたはつ)、三男、平川瓦(ひらかわかわら)という、男が3人いる兄妹(きょうだい)たちがおりました。
 この兄妹たちは、揃(そろ)いも揃って、皆(みな)、心の出来(でき)が本当に善い人々でした。兄妹の長男は、石城山(いしすくやま)という所にいて、常日頃(つねひごろ)から神様を信心し、決して無暗(むやみ)に人の道をはずれたことをしませんでした。
 ある寅(とら)の日のこと。
 夜明けの四時頃に、突然(とつぜん)、霊光(れいこう)が射(さ)したかと思うと、平和の神様が、石垣村の宮屋鳥山に出現(しゅつげん)なさいました。そして、真種増瑞の妹に、お託(たく)しになって、こう申されたのでした。
 「神は、人々の父母である。
 それ故(ゆえ)に、人は、神の子である。
 また、人と人とは、お互(たが)い皆(みな)、兄弟であり、礼(れい)を正(ただ)し、互いに親しみ合い、睦(むつま)じく暮らさなければならない。
 ところが、今の世を見れば、親しみ合うどころか、平気で嘘(うそ)ばかりつく者が増え、始終(しじゅう)、争(あらそ)いばかり続けている。
 他人の心を傷つけて何とも感じなかったり、また殺して命を奪ったりと、世の中ではまるで、鳥や獣を殺すように人を殺(あや)めても平気な有様(ありさま)ではないか。
 こんな世の中こそ、神々が、もっとも厭(いと)う状態なのであり、どうしてこんな情けない世になったのかと、心が痛(いた)むばかりである。
 そんな情けない人々ばかりの中にあって、お前だけが、善い心を持ち、また神を信じ、そして人々を真(しん)に愛し、誠(まこと)に善(よ)い行(おこな)い生活を続けていて、大層(たいそう)、神々は、お喜びである。
 そこで、私は、これからこの山にいることにして、お前たちの一生を見守ることにする。」と。
 こう言い終わるなり、風に乗ってどこかに消えてしまわれました。
 このことがあって真種増瑞は、ますます崇信(すうしん)(あつ)くなり、神との出会いを尊(とうと・たっと)い出来事だったと深く感謝し、そこを神嶽(しんごく)としたのでした。
 それから、この山の近くに草の庵(いほり)を結(むす)んで、兄妹そろって暮らし始めました。神様を崇(あが)め、広く世間の人々を愛し、兄弟姉妹は、いつまでも仲よく助け合って生活しました。もちろん家の中はいつも和(なご)やかで、ただの一度も、争いなどありませんでした。
 その後はというと、米や麦など五穀(ごこく)が豊かに実(みの)り、家業(かぎょう)である農業は順調で、日に日に富(と)み栄(さか)えてゆきました。
 それ故(ゆえ)に、他の人々が災厄(さいやく)に会って五穀の出来(でき)が悪く、時には飢餓(きが)に苦しむ者まで中にはいましたが、真種増瑞たちだけは、そんな災厄を受けることは一度もありませんでした。
 世間の人々は思いました。
 これは、真種増瑞が日頃から神様を尊び、兄妹の仲がよい賜(たまもの)であると。彼らを見てそう思う人がしだいにふえていき、また、真種増瑞の徳(とく)に、皆、大層、感じ入(い)るようになってゆきました。そしてさらに、皆、真種増瑞たちが住む近くに、ごく自然に集まって来て住み始め、たちまち村が出来上がっていったのでした。
 今の石垣登野城村がこの村で、この話が村の初めということです。


※註
~『琉球国由来記』に、「宮屋島御嶽(おたけ/うたき)は、石垣村にあり、神名は、神ヲナハレ、御イベ名、豊見タトライ」となっている。
 
※注
【庵を結ぶ】庵をつくる、庵さす、とも。小さな草葺(くさぶ)きの家。
【災厄】(さいやく)災(わざわ)い、災難(さいなん)のこと。
【感じ入る】(かんじいる)すっかり感心(かんしん)する。
【登野城村】(とのしろそん)石垣島。以前の発音では「とぅぬぐすぃく/とぅぬぐしく」など。


Posted by 横浜のtoshi





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ルミさんへ

「仕事は早いが、ミスが多い」それが、僕のトレードマークで~す。
よく、誤字脱字、ありま~す。

難しい言葉や読み方、特に沖縄のものの場合、
間違えてしまいます。

よくみなさんに、間違いを教えて頂いて、おります。

民話は、親から子に伝わるのが基本ですから、
時代背景や、人の考えはじめ、色々想像するのがまた、楽しいです。

ルミさんが、おっしゃる通り、
現代にも通じる大切な事を忘れれば、
次に、起こる事は、決まっていますから。

コメントありがとうございます。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年07月05日 06:34


yukuru mamaへ

職場の、行く同僚達からも、
総体の時に沖縄にいてくれないのか~って、
言われてます(笑)。

もっとも、その頃の僕は、多分相変わらず仕事が、忙しいです~。
割り切ってしまうと、生徒が犠牲に・・・・・・(笑)。

でも、
8月は今のところ、何にも考えていないんです。
沖縄でも、ぶらぶらしてるかなあ?

びっくりした事に、糸満アンマーさんまで、
右手、骨折したそうですね。驚きです。

横浜は、梅雨なので、ムシムシ暑いです~。
では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年07月05日 06:28


横浜のtoshiさんこんばんは
こんなに長い文章が書けるようになったのですねしかも、難しい言葉や読み方までも、間違いも無く凄いです私がこんなに長い文章を書くとミスが出てきますよ~
善い心を持ち
神を信じ
人々を真に愛し
誠に善い行い
が大切印象に残りました
現代にも通じる大切な事だと思いましたありがとうございます
Posted by ルミ at 2010年07月04日 23:49


横浜のtoshiさん

こんにちは~o(^-^)o

毎日、暑くて夏、夏、夏ですよ~(笑)

指もだいぶ快方に向かっているみたいですね!

長い文章が打てるようになって良かったですね~(o^∀^o)

toshiさんの高校は総体に参加しないのですか?

何だか無知な質問をしてるみたいで…(-o-;)

割り切って高校総体を
観に来ませんか?o(^-^)
割り切りも必要ですよ~(笑)
Posted by yukuru mama at 2010年07月04日 15:28


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