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~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第44話。


ニーウスビの神



 むかし(むかし)の、さらにずっと昔のことです。
 大和(やまと)の国から竹富島(たけとみじま)へ、(かみ)(めい)により、数々(かずかず)作物(さくもつ)(たね)()って()(ふね)がありました。ニーランへ船を着けた(とき)、この種子(しゅし)()()えず一旦(いったん)、竹富に(あず)けることになり、あとで八重山(やえやま)の九つの村々(むらむら)分配(ぶんぱい)することになりました。
 (あず)かった(かみ)は、早回(はやまわ)配達(はいたつ)の神で、この神さまは預かった(たね)(なん)とかして、出来るだけ自分の島に沢山(たくさん)配分(はいぶん)されるようにしようと心の中で(かんが)えていました。
 そこで、種が入った(ふくろ)の中から一つの袋を取り出して(かく)し、上に草を(かぶ)せておきました。そして残った(たね)の袋はやがて、ニーランの神さまによって九つの村々に()けられたのでした。
 ニーランの神さまは人々に、(すべ)ての種子(しゅし)栽培(さいばい)した(のち)は、感謝(かんしゃ)()めて(かみ)初穂(はつほ)()()げるようにと(もう)し渡しました。
 そのためみんな、()われたように初穂(はつほ)を神に()し上げたのでした。
 ところが、自分が(かく)した袋の中の(たね)だけは、こっそり隠した手前(てまえ)、それの初穂(はつほ)だけ神に差し出されることがありませんでした。その(たね)というのは、胡麻(ごま)種子(しゅし)でした。そんな理由で、胡麻の初穂(はつほ)だけは、今でも神に(ささ)げません。
 またニーランの神さまは、最初、早回(はやまわ)配達(はいたつ)の神と言われていましたが、種子を(ぬす)んで草の根に隠すという(わる)い事をしたため、ニーウスビの(かみ)と名付られたそうです。
 なお、八重山(やえやま)の九つの村々(むらむら)分配(ぶんぱい)した場所は、その時にニーランと名付(なづ)けられたのでした。それは、ニーランと()ばれる神がいらっしゃったので、そのように名付(なづ)けられたそうです。
 そういうわけで、旧暦の八月八日の日、神女(しんにょ)たちがそこに集まって祈願(きがん)し、世迎(ゆーん)かいという祈願(きがん)をします。また祈願した後、そこからトンチャーという歌をうたい、村へ()がって来ます。
 一方(いっぽう)で婦人たちは、村の入口で神女(しんにょ)たちを待ちうけて、トンチャーを歌い、(つづみ)を打ちながら、お(むか)えするそうな。

 
 
※この話の参考とした話
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『竹富島・小浜島の昔話』
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『蟷螂の斧』


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●伝承地
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~ずうっと昔、大和の国から、竹富島へ(作物の)種子を、数々持って来て、ニーランへ(船を)着けて、この種子は(竹富で)預かって、八重山の九つの村々へ分配することになっていたそうな。
 この神の名は、初め、早回り配達の神だったんだが、この神様は、預かった種子をなんとかして、自分の島にはたくさんの種子を、配るようにしようと思っていたそうな。それで、この種子袋から一袋を取り出し、草の根っこに被せて置いて、九つの村々に分配したそうな。
 そして、これらの種子は栽培して、神へ初穂を差しあげるようにと、ニーランの神が言ったので、言われたように、初穂は差しあげたんだが、自分が隠したもの、それは、草の根に隠してあったので、これだけは初穂として差しあげることができないと、差しあげなかったそうな。この種子というのは、胡麻の種子だったので、胡麻の初穂は今でも、差しあげない。
 それで、この神は、初めは、早回り配達の神と言われたんだが、悪い事をしたので、自分で種子を盗んで、(草の)根に隠したので、ニーウスビの神と名付けたそうな。
 それで、そこから持って来て、種子を分配したので、それから、そこをニーランと名付けられたそうな。ニーランと呼ばれる神がおいでになったので、そのように名づけられたそうな。
 そういうわけで、旧暦の八月八日の日に、神女たちがそこにお出かけになって、祈願し、世迎(ゆーん)かいといって祈願をするんですよ。祈願した後、そこからトンチャーという歌をうたい、村へ上がって来る。一方、婦人たちは村の入口で(神女たちを)待ちうけて、トンチャーを歌い、鼓を打って迎えるんですよ。(『竹富島・小浜島の昔話』)
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~大昔、ヤマトの根の国からニーラン神が舟に乗って竹富島の西海岸に着いた。ニーラン神は、竹富島の一神に、穀物の種子を持って来たので、ハヤマワリハイタツの神に命じて八重山九ケ村に分配してくれと頼むと、その竹富島の神は、そのニーラン神の種子袋から一袋をこっそり草むらに隠してハヤマワリハイタツの神に渡した。その隠した袋には、胡麻の種子が入っていたので、今でも神に供える初穂としては、胡麻を上げることがない。また、それを隠した神の名を根ウスイ(草の根でかぶす)と呼ばれた。旧八月八日、の名世迎えの祭は、このニーランの神から種子をいただいて豊年を祈願するものである。(『蟷螂の斧』)


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くがなーサン、こんにちは。

「世迎えゆんた」、ユーンカイ(世迎え)の行事、
神踊りをはじめとする信仰からくる、話といえるでしょう。

石垣の、トゥンギャーラ、ありがとうございます。

訳していただいたので、
唄の意味が、よりしっくりと、みなさんにも理解して頂けたと思います。

いつの世も、ゆがふ(世果報)の真の心が、伝わっていくといいですね。

コメントありがとうございます。

では。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2010年11月27日 13:30


世迎えゆんたの関連伝承ですね、竹富島ではトゥンチェーマとトゥンチャーに接尾語のマを付けて呼んでますね、石垣島でも、トゥンギャーラなどと呼ばれる世迎えのゆんたがあります。
歌詞は
あがとから(彼方から)
来る舟や
ばがいぬ(我が上に)
とぅんちぇーま(取る種の数々)

うやきゆば(大宅世をば)
たぼらる(賜る)

上記は竹富の歌詞ですが石垣島登野城の歌詞もほぼ同一ですしメロディーもほぼ同じですが方言差由来の単語に若干の違いがありますね。
懐かしい唄です。
Posted by くがなー at 2010年11月27日 01:47


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