てぃーだブログ › 琉球沖縄を学びながら、いろいろ考えていきたいな~ › 琉球沖縄の伝説・沖縄先島編 › 鉄人の根原金殿 ~新・琉球民話・口碑伝説集第6話

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~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第74話。


鉄人(てつじん)根原金殿(ねーれかんどぅ)



 (むかし)むかしの、お(はなし)です。
 竹富(たけとみ/だきどぅん)島の根原金殿(ねーれかんどぅ)という人が、与那国(よなぐに/ゆなぐに)島に愛人(あいじん)をつくって、その女性の(もと)毎晩(まいばん)(かよ)った、という事からこの話は始まります。
 根原金殿(ねーれかんどぅ)という人物は、非常(ひじょう)(すぐ)れた頭脳(ずのう)()ち、また大変(たいへん)力持(ちからも)ちであったそうです。
 六つあった竹富(たけとみ/だきどぅん)島の村々(むらむら)統一(とういつ)し、(かみ)(あが)められていました。
 何故(なぜ)根原金殿(ねーれかんどぅ)与那国(よなぐに/ゆなぐに)島に()ったのかは、色々(いろいろ)()われて()ましたが、(いま)となっては、その真相(しんそう)はわかりません。
 しかし(いず)れにしても、根原金殿(ねーれかんどぅ)与那国(よなぐに/ゆなぐに)島の素晴(すば)らしく(きよ)らかで(あい)くるしい女性と出逢(であ)ってからというもの、(よる)になると一人(ひとり)(ふね)()し、竹富島から与那国島まで()いで、その女性と(よる)(とも)にしていました。そして、()()けきらぬうちに竹富島に帰って来ていました。
 やがて、この事を()った与那国島の人々は、大変に(おどろ)きました。
 (なん)とか(いま)(うち)に、根原金殿(ねーれかんどぅ)(とら)えて(ころ)してしまわなければ、やがて(しま)征服(せいふく)され、(かれ)支配下(しはいか)(はい)ってしまうに(ちが)いないと(かんが)えて、たいそう心配(しんぱい)したのでした。
 そこで島の人々は(あつ)まって、根原金殿(ねーれかんどぅ)暗殺(あんさつ)する相談(そうだん)をしました。
 そして(だれ)(かれ)(ころ)すのかという話題(わだい)になると、(かれ)愛人(あいじん)こそが(もっと)適任(てきにん)だということになり、彼女に(たの)もうということで話がまとまりました。というのも彼女なら、毎晩(まいばん)一緒(いっしょ)()るのだから、きっと不死身(ふじみ)()われている根原金殿(ねーれかんどぅ)でさえも、()(ゆる)して(すき)出来(でき)(ころ)せるに(ちが)いないという事になったからでした。
 島の代表(だいひょう)長老(ちょうろう)は、早速(さっそく)女性(じょせい)()()せて(はな)しました。
 「お(まえ)だけが島の人々のため、唯一(ゆいいつ)根原金殿(ねーれかんどぅ)(ころ)(こと)出来(でき)る。
 お(まえ)は、これを成功(せいこう)させて、それから島の最高(さいこう)神女(しんにょ)である(つかさ)になるのだ。」と。
 その時代(じだい)(つかさ)になるという事は島の女性にとって、この(うえ)もなく大変(たいへん)名誉(めいよ)でした。
 そして(よる)がやって()ました。
 そしていつもの(よう)に、根原金殿(ねーれかんどぅ)が、(やみ)(まぎ)れてやって()ました。
 二人はいつものように(あい)(ちぎ)りを()わすと、その()彼は、彼女の(よこ)でぐっすり(ふか)(ねむ)りに()ちたのでした。
 そこで(おんな)用意(ようい)しておいた(かたな)根原金殿(ねーれかんどぅ)()しました。しかし、何処(どこ)()しても(まった)()()さらないのです。
 というのも、この男は体全体(からだぜんたい)(てつ)出来(でき)ていたために刀が通用(つうよう)しなかったのです。
 しかしながら、幾度(いくど)(あい)()って()間柄(あいだがら)です。
 女は、(かれ)(くび)(あた)りだけが(すこ)(やわ)らかい事を(おも)()しました。
 島の将来(しょうらい)が自分に()かっています。
 女は全身(ぜんしん)(ちから)()(しぼ)って(くび)(かたな)()()てたのでした。
 すると流石(さすが)根原金殿(ねーれかんどぅ)()()きました。そして、いつも()(てつ)(つえ)(つか)むなり、(かたな)()さったまま(いえ)から()()して()きました。そして(むら)(おお)きな(みち)()(なか)まで()ると、仁王立(におうだ)ちし、鉄の(つえ)をついたまま、微動(びどう)だにしなくなりました。
 朝が、来ました。
 与那国(よなぐに/ゆなぐに)島の住人達(じゅうにんたち)は、根原金殿(ねーれかんどぅ)(あま)りに(おそ)ろしい形相(ぎょうそう)()て、(おどろ)き、また狼狽(うろた)えました。
 (なか)にはそれを見たばかりに、それから(うな)され続けて()(もの)()(ちが)った者までいたそうです。
 こうして、根原金殿(ねーれかんどぅ)一週間(いっしゅうかん)、そこに()(つづ)けたそうです。
 (すで)()んでいるのか、まだ死んでいないのか、島の人々は心配(しんぱい)(なに)()につきません。話というと、その事でもちきりでした。しかし(おそ)ろしくて、(だれ)根原金殿(ねーれかんどぅ)(ちか)づく事が出来(でき)ません。
 そうしているうちに、根原金殿(ねーれかんどぅ)(くち)から蛆虫(うじむし)()()しました。
 これを、()(うえ)や、家の屋根(やね)から見ていた島の人の中には、あまりの光景(こうけい)衝撃(しょうげき)()け、落ちて()んだ(もの)が、沢山(たくさん)いたそうです。
 ()(もの)は、根原金殿(ねーれかんどぅ)()きていて(くち)から()()(うじ)(よう)なものは、(たん)(かれ)(こめ)()んでいるに()ぎないと()(はな)ちましたが、矢張(やは)(おそ)ろしくて(だれ)(ちか)づけません。
 (くび)()されて十日ぐらい()った(とき)のこと、(てつ)(つえ)をつき、それまで(うご)かなかった根原金殿(ねーれかんどぅ)が、どっと地響(じひび)きを立てて(たお)れました。
 その(はなし)を耳にするなり、()()った者達(ものたち)がいましたが、その中には(あま)りに(むご)たらしい死体(したい)()るや(いな)失神(しっしん)する者や、それが原因(げいいん)沢山(たくさん)(ひと)()んだそうな。


 
※この話の参考とした話
高木~「弁慶島」・柳田~「弁慶島」
沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『竹富島・小浜島の昔話』
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~『蟷螂の斧』
根原金殿(ねーれかんどぅ)は竹富島の玻座間御嶽(ウーリャオン)に祀られている。

「表記の変更について」
 2015/11/03、根原正晴様より、表記「根原神殿」は「根原金殿」の誤りであるとご指摘を受けました。この場をお借りして、感謝申し上げます。ご指摘を受け、参考にした資料を見直したところ、「根原神殿」と「根原金殿」の二つの表記が存在する事に気付きました。また、少し調べたところでも、やはり両方の表記がありました。「殿(シン)」と「金(キン)」は音も似ていて、どこかで書き誤ったものと想像できますが、どちらが正しいかまで調べられる程の資料がないため、確証には到っておりません。より古い資料に書かれた方が正しいと思われますが、そこまで調べきれませんでした。ただ個人的に考えた上で、本日より「金」を採用することに致しました。その理由ですが、竹富島の民話の英雄が何人かおり、「他金殿(たきどぅん)」、「久間原発金(クマーラハツカネ)」に「金」の文字が入っているため、金の方が意味的に馴染みやすい気がした点と、「ねーれかんどぅ」という発音を考えた場合、「かん」は「神」でもいい気がしますが、「金」は琉球で「かね」とよく発音される点、そして琉球の人物の名前に「神」が入る例は少なくて、「金」が入る場合が多い点(※もちろん神の名にはよく使われる)、以上から、「金」を採用することに致しました。


●伝承地
高木~「弁慶島」・柳田~「弁慶島」
沖縄県八重山郡竹富町竹富島~ええ、根原神殿が与那国島に妾を持ち、毎夜通った話をしましょう。
 根原神殿はたいへんすぐれた頭を持ち、力もあり、大変な神様であったそうな。そして、与那国島にすばらしい美人の女をみつけ、夜になると、船を出し、船を漕いで、与那国島へ行き、その女と寝て、また船を漕いで夜も明けぬうちに竹富島に帰って来たそうな。
 これ(根原神殿の行動)を見た、与那国島の人々はびっくりして、なんとかこの根原神殿を捕え殺さなくてはならない。(そうしないと)俺たち与那国の島は彼に完全に征服され、彼のものになってしまうと心配し、根原神殿を殺す相談をしたそうな。そうして、では、誰が彼を殺すのかということになり、彼の妾に頼もう(ということになった)。これなら根原神殿といっしょに寝るんだから、(その隙に殺せるだろう)これならできるということになったそうな。
 島の長老は、この女を呼んで話したそうな。
 「お前は、必ず根原神殿を殺せ。お前が殺したなら、お前を司(つかさ)にしよう」と。
 そのころ、司になるということは大変な名誉なので、この女は嬉しく思い、 「はい」と答えたそうな。
 夜になり、根原神殿がやって来て寝たので、この女は刀を持って根原神殿を刺すのだが、全く刺すことができなかったそうな。この男は身体全体鉄でできていたので、刀が全く通らなかったそうな。しかし、首だけは少しやわらかかったので、首に刀を刺すことができたそうな。
 根原神殿は、跳び起きて走り出し、村の道の真中で鉄の杖をついて、じいっと立っていたそうな。これを見た与那国島の人はうろたえびっくりして、自分だけで勝手に驚いて死ぬのもあり、熱を出すものもあったそうな。根原神殿は一週間も立ちつづけていたので、彼はまだ死んでいないと全員が心配したそうな。そうしているうちに、根原神殿の口からは蛆がわき出した。これを木の上や屋根の上から見ていた与那国島の住民はまたまたびっくりして、木から落ち、屋根から落ちてまたたくさんの人が死んだそうな。口から出て来る蛆を見て、与那国島の住民は、彼が米を嚙んでいると思い、びっくりして死んだようだ。そして、十日ぐらいたって、鉄の杖をついて立っていた根原神殿はどうっと倒れたそうな。これを見て、またたくさんの人が死んだそうな。そのような話がありますよ。(『竹富島・小浜島の昔話』)
沖縄先島・沖縄県八重山郡竹富町竹富島~竹富島ハザマ村の酋長を勤める根原神殿は、力の強い神さまで、竹富島六ヶ村を統一し、与那国島までも自分の支配下に置こうとした。たまたま与那国島の島仲村にすばらしい美女がおり、神殿は一夜のうちに海を渡り、女と契りを込めては夜の明けぬ前に竹富島に戻っていた。このことを与那国島の人々が知り、女を神司にすることを約して、神殿を殺すべく依頼した。神殿の体はすべて鉄で覆われていたが、首の真ん中だけ柔らかい所があり、これを知っていた女は、そばに眠る神殿の首を短刀で突き刺した。神殿は、首に短刀を突き刺したまま、鉄の棒を杖にして外に飛び出した。人々は恐れおののいて高い所に逃げて神殿を見ると、口に白い飯を含んで、襲いかかる様子であった。が、神殿は一週間後に地響きをたてて倒れた。(『蟷螂の斧』)


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根原さま。ご指摘、ありがとうございます。
参考にした資料を、調べたところ、「殿」と「金」に二つの表記があることに気付きました。
考えた末、「金」に変更することにし、本文を直しました。
重ねて、ありがとうございます。
Posted by 横浜のtoshi横浜のtoshi at 2015年11月04日 07:38


根原神殿の表記はまちがいです。 正式には根原金殿と思います。
読み方は当たっています。
Posted by 根原 正晴 at 2015年11月03日 14:56


横浜のtoshiさん
こんばんは~
私もいっきに読みましたよ~
愛を取るか自分の名誉を取るか?
自分の名誉、島民の事を選んで愛する人を殺してしまった 報いが…
竹富島から毎夜船を漕いで与那国島に… そんなにしてまで 会いたい 愛していたんですね…
さぞかし無念だった事でしょう…
そんな事を考えてしまいましたよ
Posted by ルミ at 2011年01月21日 19:19


onemahina、はいさい、今日(ちゅー)拝(うが)なびら。

大丈夫です。あなたも与那国の女、血が流れてますから~(笑)。
でも、息だけは、して下さいね(笑)。

なんだか良く分からないんですが、
奄美や沖縄の話に、鉄人とか、鉄を食べる飲むって、よく出てくるんです。

例えばこの話の場合、
肌が黒くて鉄みたいに見えたのかなぁ、とか、
頑強(がんきょう)って意味かなぁ、とか、
やっぱり、歴史的は、農耕機具において、そして沖縄の土壌を考えると、
木製に比べて、鉄製は、すごいはずだから、
それだけに、「鉄」という言葉に、
それなりの意味が、きっと込められているんだろうなぁ、などと、
いろいろ想像しながら、僕も、読んで(書いています)。

いずれにしても、
いっきに読んで下さる人がいただけで、
一生懸命、書いた甲斐がありました。

ありがとうございま~す。

さすがに、幼い子どもには、まだ早い、大人向きの童話ですね。

では。
Posted by 横浜のtoshi at 2011年01月21日 15:27


鉄人28号? アイアンマン?

それはそうでしょ。司って、名誉どころか神だからなあ。
す~み~さんだって、明日から昇級ですとか、社長ですって言われるより、
明日から神として人々から見られた方が、いいでしょ?

えっ? 僕はどうかって?
もちろん、お断りして、額に汗して労働します。うそうそ。
Posted by 横浜のtoshi at 2011年01月21日 12:14


これを読んだ時、とある漫画のワンシーンと、
凄く良く似ていて!!
漫画と、昔話が、ダブっていました!

死後の様子が、ちと、違っていますけどね!

ちなみに、根原神殿を殺害することで、
名誉も地位も約束させられた妾、その後は、
どうなったんでしょうね~~。
壮絶な状況になっても、ノロや司を、って、
望んだかな(^^;;
Posted by す〜み〜☆ at 2011年01月20日 21:30


コメント以外の目的が急増し、承認後、受け付ける設定に変更致しました。今しばらくお待ち下さい。

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