雨の神と龍宮の神 ~琉球沖縄の伝説

2010年11月26日

Posted by 横浜のトシ(爲井) at 20:20│Comments(0)琉球沖縄の伝説・沖縄先島編

みんなで楽しもう!
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~

奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第45話。


雨の神と龍宮の神



 むかし(むかし)のことです。
 伊良部元島(いらぶもとじま)が、大変(たいへん)旱魃(かんばつ)(なや)まされていた(とき)の、お(はなし)です。
 ある一人の漁師(りょうし)()(ばん)のこと、漁に出ましたが、潮時(しおどき)がよくなかったので干潮(かんちょう)になるのを()つため、(すわ)っていたそうです。
 するとそこへ(あめ)の神が、(てん)から()りて()たのでした。そして龍宮(りゅうぐう)の神を()()して言いました。人々(ひとびと)旱魃(かんばつ)でとても(こま)っている。雨を降らせて()げなさいと。
 (しばら)()つと雨が()り出しました。雨の神は、()った雨の量が少ないので、あともうひと雨、降らせよと(めい)じてから、天に(のぼ)っていきました。
 すると、天の神が見えなくなる(ころ)になってから大雨(おおあめ)になったのでした。
 さて偶然(ぐうぜん)(はま)で、その一部始終(いちぶしじゅう)を見ていた漁師(りょうし)は、今までは雨というものが天から自然に降るものと思っていましたが、(あめ)(かみ)龍宮(りゅうぐう)(かみ)に命令して雨を降らせていたのだと(さと)ったのでした。
 それから(のち)、何年かが()って、またもや伊良部元島(いらぶもとじま)旱魃(かんばつ)見舞(みま)われたのでした。
 村中(むらじゅう)の人々はとても心配しました。すると(れい)漁師(りょうし)が、もしも自分が欲しい物をくれるなら雨を降らせて上げようと、如何(いか)にも自信ありげにみんなに向かって()()しました。村の人々は相談の(うえ)、漁師の希望を(かな)えました。
 すると漁師は、以前(いぜん)の場所へ出掛(でか)けて行ったのでした。
 そして龍宮の神を()び出すと、大雨を降らせよと命じました。すると()もなく大雨が降りました。村人(たち)大層(たいそう)喜んで、それはそれは漁師に感謝(かんしゃ)したのでした。
 ところがその頃、雨の神が天から()りて来て龍宮の神を呼びつけるなり、(だれ)命令(めいれい)勝手(かって)に雨を降らせたのかと(おこ)っていました。それで(はじ)めて龍宮の神は、自分に命じたのが雨の神でなかったということを()ったのでした。そしててっきり雨の神の命令(めいれい)だと思って雨を降らせたのだと説明し、()びたのでした。
 雨の神と龍宮の神はそれから話し合い、一体(いったい)誰の仕業(しわざ)なのかと相談した結果(けっか)犯人(はんにん)を見つけるために()()えず当分(とうぶん)の間は雨を降らさず、様子(ようす)を見てみることにしよう、という話でまとまりました。
 雨が降ってからというもの、日照(ひで)りが、ずっと長く続いたため、当然、()ぐに旱魃(かんばつ)になって、村人たちは(ふたた)び漁師にお願いをしました。
 漁師は、神たちの計画(けいかく)など(まった)く想像だにしなかったので、村人たちの(たの)みをそのまま聞いて、この前同様(どうよう)に、(はま)に出向いて、龍宮の神を()び出しました。
 すると龍宮の神が突然(とつぜん)(あらわ)れて、この(わたし)(だま)したのはお(まえ)だったのかと遠くから怒鳴(どな)りながら、漁師の(ほう)にどんどん(せま)ってくるではありませんか。
 漁師は(おどろ)いて一目散(いちもくさん)に走り出し、フツムトの(もり)の中に逃げ()んだのでした。その後を龍宮の神が()()けてゆきました。
 (さいわ)いなことに森には女の神がいて、漁師は経緯(いきさつ)を話し、また決して自分には悪気(わるぎ)はなく、みんなのためにと思ってした(こと)だと話して助けを(もと)めたところ、女神は漁師を(かく)してくれたのでした。そこに龍宮の神が(あら)われて、こちらに人が来なかったかと(たず)ねたところ、女神は、北の方へ()げていったと答えたのでした。
 龍宮(りゅうぐう)の神は、その後、伊良部元島(いらぶもとじま)じゅうを探し回ったものの、一向に漁師を見付(みつ)けることが出来ません。そこで(おこ)った龍宮の神は、島に(わる)い病気を流行(はや)らせると、龍宮に(もど)って行きました。そのためそれから島の人々は、病魔(びょうま)に苦しめられる(こと)になってしまいました。
 二、三年が()った頃のこと、元島の(あた)りで()(かく)れしていた漁師の男が、歌をうたいながら苧麻(からむし/ちょま/まお)()っていたところ、龍宮(りゅうぐう)(かみ)偶然(ぐうぜん)にその声を聞きつけて、あの時、森に逃げた()んだ男に違いないと確信(かくしん)し、()()りにしたそうな。
 たとえ悪気(わるぎ)があろうとなかろうと、人が神の真似事(まねごと)すれば、ただですむ(はず)がありません。



※この話の参考とした話
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町佐和田~『伊良部郷土誌』


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●伝承地
沖縄先島・沖縄県宮古郡伊良部町佐和田~伊良部元島が旱魃に悩まされていたとき、一人の漁師が或る晩、漁に行ったが潮時が合わないので、干潮になるのを待って坐っていると、そこへ雨の神様が天から下りて来て、龍宮の神様を呼び、人々が旱魃で困っているようだから、雨をあげよと命じた。ところが暫く立ってから雨が降った。雨の神様は雨の量が少ないので、あとひと雨降らせよと命じて天へ昇った。神様が見えなくなる頃、大雨を降らしたという。浜でその話を聞いていた漁師は、雨は天から自然に降るものと思っていたのであるが、龍宮の神様があげなければ降らないのだということを悟った。
 その後幾年か立って、またも旱魃となったので村中の人々が心配していると、一人の漁師が、自分に欲しい物をやったら、雨を降らすことがでぎると、いかにも自信ありげに申し出たので、村の人々は申し合わせ、漁師の希望を叶えてあげた。漁師は、この前聞いた場所へ行って、龍宮の神様を呼び雨をあげよと命じたら、暫くして大雨が降ったので、村人達は大変悦び、漁師に感謝していた。
 雨の神様は天から下りて来て、龍宮の神を呼びつけて、だれの言い付けで雨を上げたのかといって怒ったので、龍宮の神は、自分に命じたのは雨の神様でなかったということを知り、あなたの命令と思ったことは、本当に済まなかったと詫び、一体だれの仕業でしただろうかといって、当分雨を降らさないことにした。ところが、また、日照りが長続きしたので、村人たちは漁師にお願いした。漁師は、神様たちのこうした計らいを全く知らず、村人達の頼みを聞き、この前と同様浜に行って龍宮の神様を呼んだ。龍宮の神様は、私を騙したのはこの奴だといって追っ駈けた。漁師は吃驚して逃げてフツムトの森へはいった。幸に女の神様がいたので助けを求めると神様が隠してくれたという。暫く立って、龍宮の神様がそこへ現われて、こちらへ人間が来た筈だ、出せと言うと、女神は北の方へ行ったと答えたので、元島まで探し廻ったのであるが、それらしい者は見付からず、仕方なく、その元島へ悪い病気を流行(はや)らせたので、この島の人々は病魔に苦るしめられた。二、三年立ってから、元島附近で逃げ隠れた男が歌をうたいながら苧麻を刈っていたら、龍宮の神様はその声を聞き、この奴は森に逃げた男に違いないと言って、これを生けどりにしたという


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