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~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~
~琉球沖縄の、先祖から伝わってきたお話~
奄美・沖縄本島・沖縄先島の伝説より、第47話。
ヤーマス御願 の由来
むかし
その川満に、
この
そのまま日々が流れていきましたが何も
「ああ、これは
さて、
「お前は
それを聞いた妹がとても
「ああ。本当にそうして
そんなわけで、
ところが、ヤーマスという
そこで
「今、
お前たち兄弟三人は、あの島に行って
兄弟三人は、母からその話を聞いて
さて、
兄弟三人がこの家の中に入って行きました。そして、
「
すると
このところ、神がやって来ては人を
それを聞くと、兄弟三人は
「その、天から来て人を
すると
「パチャの広場に降りて来て、決まった時間に人を
パチャとは、
その場所を聞くと兄弟は、さっそくそこに行き、
やがて
兄弟三人はみな、とにかく力にだけは
ナガピシとは、潮が引くと陸のように本島まで続いて出る陸地でした。
兄弟たちは、潮が引いてからナガピシに行ってみたのでした。
ナガピシには、舟がやっと通れるような
海の底はまるで陸のようで、
ところが通された先で、
兄弟は、ヤーマス御願を
すると
兄弟たちは、自分達が
ただ門番をしている女だけは
こうして兄弟三人は、その女性を
その女性はやがて長男の妻となり、生まれた女の子たちが、やがて次男と三男の妻となったそうです。
またそれからというもの、ヤーマスの
こうして、
なお兄弟三人は、何よりもヤーマス
それが、
※この話の参考とした話
①沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~『沖縄の昔話』
②沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~『宮古島庶民史』
③同右~「沖縄民話の会会報」三号
④沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町与那覇~『ゆがたい』第四集
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●伝承地
①沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~この下地(しもじ)に、川満(がわみつ)という部落があるな。その川満という部落に、津浜按司(つはまあじ)という人がおったそうだ。夫婦二人で、十ヵ年、二十ヵ年たっても、子どもができなかったそうだ。
それが、後に、奥さんが妊娠したそうだが、三ヵ年なるけれども、子どもが生まれない。不思議だと思っていたら、三ヵ年後に、人間でなくして、大きな卵を三個生んだそうだ。そのときは、按司といえば、相当の位の人だったから、この津浜按司は世間に恥しく思って、これを畑のフサギラーーこの辺の言葉で、草をたくさん集めて積んでおいたものをフサギラと言って、昔はよくあったがーーその下に卵三個を埋めて、毎朝毎晩行って、様子を見ておったそうだ。しかし、三ヵ月になるけれども、そのままであって、三ヵ月後に、朝早く行ってみたら、その卵から大ぎな男の子が三名できておったそうだ。
「ああ、これは珍しい」と言って、その三名の子どもを家に連れて帰って来て、育てていたそうだ。
そうすると、長男は七つ、次男は五つ、三男は三つぐらいに大きくなった頃から、御飯を三升ずつも食べるようになっておったそうだーー当時は、こっちでは白米はできなかったから、粟の飯だっただろうーーだから、津浜の按司も、その三名の子どもに食わせて養育するのが非常に困難になって、どうしたらいいかと考えておったそうだ。その按司の兄妹(きょうだい)が与那覇(よなは)に嫁入りして行っておったそうだが、その兄妹には子どもがなく、たいへんな富豪だったそうだから、その妹に、
「お前は、そんなに裕福に暮らしているが、子どもがないから、わしの子どもを貰って育てて、お前の子どもにしたらどうか」と聞いたら、喜んで、
「ああそうしてもらったら、ありがたい」と引ぎ受けたそうだ。それで、与那覇の妹が、三名の兄弟全部を養っていたそうだが、もう十(とお)にも余る頃になれば、ますます食べ物の量は増えたらしいな。さすがに富豪な家でも、食わすのに堪えきれなくなっておったそうだ。そのとき、ちょうど来間の島が、千人原と言って、千人の人間が住まっておったそうだが、このヤーマスという御願(うがん)をとりやめたために、天罰で、天から怪物が出て来て、来間の人を全部攫(さら)って、無人島になっておったそうだ。だから、その与那覇のお母さんが、
「今、来間が無人島になっているから、お前たち兄弟三名は、向こうの島に行って、暮らしを立てたらいいだろう。たくさんの土地があるし、粟を作っても、芋を作っても贅沢(ぜいたく)に食べられるから、向こうに行ったほうがいいよ」と相談したら、
「自分らもそれがいい」と賛成してなあ、向二うには、マイヤマと言って、大きな木がたくさんあったそうで、その大きな木を倒してそれで舟を作って、三名、来間の島に渡って来たそうだ。
渡って来て見たら、人家は全滅して、井戸から上がる所に、スムリャーという家だけに、年寄りのお婆さんがおったそうで、兄弟三人、その家に入ったそうだ。したら、お婆さんは、三名の兄弟を怖がって、鍋を被って隠れておったそうだ。家の中を全部調べて、鍋を返して見たら、お婆さんが現われたそうだ。
「なぜ、あんたは、そんなことをしているか」と言ったら、
「いやもう。こっちは、神さまが来て、人を全部攫って行ってるから、今日はわたしの番だと思って、あんたらがわたしを攫いに来たと隠れた」と。
「そんなら、いちいち訳を話してくれ」と言って、お婆さんからいちいち聞いたら、
「まあ、こうこういうふうに、一年に一回やる、大切な御願をとりやめたために、天罰で、こういうふうに全部の人が攫われて、自分ひとりしか残っていない」と話したそうだ。したら、
「その天から来て人を攫う怪物は、何月何日の何時ごろ来ると決まっているかあ」と。「その場所はどこか」
と聞くと、
「パチャの広場に降りて来て、攫って行ってる」とーーパチャと言って、昔の道が段々であるんですよーー。
それを聞いて、兄弟三名、その日のその時間に行って、隠れておったそうだ。ほんとうに、その時間には、天から真直ぐ、なにかが吊されて来て、その怪物はなにかと言えば、大きな牛だったそうだ。そこで、兄弟は、普通の人ではない、力に自信があるから、いちばん先は、三男に、
「お前から行って掛かれ」と言って掛からせたそうだ。したら、三男は、どうしてもかないそうでない。次には次男を出したら次男も、
「どうしてもかなわん」と。
「これは最後に、わしが出なけりゃあいかん」と、長男が出て行って、その牛の角をば二つまで、引ぎ抜いたそうだ。引ぎ抜いたら、牛は、大きな唸り声をあげて、ナガピシという所ーー宮古に通じた干瀬(ぴし)があるよ、浅瀬がーーそこから泣いて行ったそうだ。
その後ーーこっちは、ナガピシは、潮が引いたら陸のように本島まで続いて出るんだよーー兄弟三名、潮が引いてから、ナガピシに行ったそうだ。したら、そのナガピシの間には、舟の通れるような海峡があって、そこから弟の三男が海の底をのぞいて見たら、大きな家があって、その家の門で女の人が、糸を掛けていたそうだ。それを見て三男は、長男と次男を呼んで、
「見てみなさい。珍しいものが海の底に見えている」と。
「行って全部見てみよう」と、三名、海の底に入って行って見たら、海の底は陸みたようにして、龍宮城のように立派な家があって、その女の人は、門番をしておったそうだから、
「おい、あんたの主人に会わせてくれ」と言うたら、
「そうですか。そんなら待ってください。主人に聞いてみますから」と聞いてみたら、主人が、
「通しなさい」と。
「ああ通していいそうですから」と入らせたそうだ。入って見たら、その主人が血まみれになっておって、 「角二つ取られたから、もう自分は命がない」と言ったそうだ、それは神さまであるからして、知っておったそうだ。兄弟三名に、
「あんた方には負けた」と。
「ヤーマス御願を怠ったために、集めた人間はどうなってるか」と。
「いやあ全部こっちにいる」と。
「そんなら。それを返しなさい。わたしらが連れ帰って、来間の島を再建するから」と言うたら、
「ああもう、おそらくそれを連れて行っても役には立たない。全部目の中に鉛を入れてあるから駄目だ」と言うて、「自分が負けた詫(わ)びとして、門番をしている女の人を連れ帰りなさい。あれだけは完全な入間だから」
というふうで、その女の人をこっちに連れて帰ったそうだ。
その女の人を来間に連れ帰って、長男の奥さんにして、その間から生まれた女の子どもを次男が奥さんに、次に長男から生まれた、あとの女の子を三男が奥さんにしたそうだ。ーーこっちのヤーマスのときは、三軒、スムリャープナカ、ウプヤープナカ、ウーマスシャプナカとあって、今日まで御願をするとぎには、その家でやっているわけだよーー。そのようにして、来間の島の千人原が無人になっているときに、再建したのは、この兄弟三名だと。そういうことで、兄弟三名が源(もと)になって、今の来間島は作ってあるという意味だ。そのときから、兄弟三名は、盛んにヤーマス御願をしたそうだ。来間のヤーマス御願のいわれはそれだな。(『沖縄の昔話』)
②沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~昔、来間島にバーント(鬼)がいて、島民が一人ずつ食い殺されていった。与那覇村の強力の三人兄弟が、この鬼を退治しようとして、島に渡って探していると、一軒の小屋で老婆が泣き悲しんでいるのを見た。訳を聞くと、今晩あたり自分が食い殺されるだろうというので、三人はこれを慰めて、近くの物陰に隠れて鬼の来るのを待った。真夜中ごろ、果して鬼がやってきたので、三人が力を合わせて、これを投げ伏せ、大木に縛り付けた。翌朝見ると、大木は根こそぎ倒れて、鬼の姿は見えず、昨夜の格闘で傷ついたとみえ、血痕が地上に残っていた。三人は、その血痕をたよりに尋ねて行くと、島の東海岸の洞窟内で呻き声が聞こえたので、踏み込んで鬼を退治することができたが、全身真黒で口が耳の下まで裂けていた。これから島内には鬼の危害はなくなり、住民が繁昌したので、祈願祭としてヤーマスプナカを始めるようになった。(『宮古島庶民史』)
③同右~宮古島川満のキサマ按司の娘が、ひとりでに孕み、三年後に三つの大きな卵を生んだ。その三つの卵から三人の男の子が生まれたが、この子どもたちは、たいへんな大飯食らいであった。キサマ按司は、三人の子どもを養い切れないので、それを与那覇のミル豊見親に預けた。そのミル豊見親も養い切れず、三人兄弟を来間島に赴かせた。兄弟が来間島に渡ってみると、その島は一年に一度のたいせつな御願をやめたために、神さまが怒って島人を皆さらってしまい、スムリャーという家に、老婆がただ一人、鍋を被って隠れていた。兄弟は、老婆に悪神の現われる場所を聞き、悪神をナガビシで待つと、悪神は赤牛となって現われた。兄弟が力を合わせて悪神をやっつけ、その牛神の跡を追って海の底を訪ねると、門のところで糸を巻いている娘がいた。その娘の案内で牛神と会うと、牛神は血だらけで、御願を復活してくれるならば、来間島の暮らしを邪魔しないという。兄弟は御願の復活を約束し、さらわれた島人は、すべて目に鉛をつめられて駄目になっていて、その門番の娘だけを連れて帰った。島に戻ると、門番の娘はスムリャーの老婆の家の娘であることが分り、これと長男が結婚して子どもをもうけ、その子どもと次男、三男が結婚して家をおこし、それぞれスムリャーブナカ・ウプヤーブナカ・ウーマスシャブナカとなった。またそれ以来、三人兄弟は、ヤーマス御願(豊年祭)をさかんにおこない、これが今に及んだという。(「沖縄民話の会会報」三号)
④沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町与那覇~昔、来間島にファントゥという大男がいて、来間島の人々を全部食ってしまったので、与那覇の部落から力持ちの男が二人、これを退治するために来間島に渡った。ある一軒で泣き声が聞こえるので探してみると、お婆さんが一人台所に薪をかぶって隠れていた。聞くと、今夜はわたしがファントゥに食われる番だというので、二人が待っていると、夜中になると大男のファントゥが現われた。二人は、ファントゥに突進して押さえつけ、屋敷のそばの大木に縛り付けた。翌朝になって再びそこへ行って見ると、大木は引き抜かれてファントゥは見えず、血の跡が点々と続いていた。その血の跡をたどって行くと島の東岸の洞窟に続いており、なかに入ってみると、大男のファントゥが血だらけでのたうち回っていた。そこで二人は、再びファントゥをつかまえ舟に乗せて沖に流した。それで、こんな人食いが島に現われないようにと、シマフサラと言って、動物の骨をシメ縄につるして、さげるようになった。(『ゆがたい』第四集)
①沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~この下地(しもじ)に、川満(がわみつ)という部落があるな。その川満という部落に、津浜按司(つはまあじ)という人がおったそうだ。夫婦二人で、十ヵ年、二十ヵ年たっても、子どもができなかったそうだ。
それが、後に、奥さんが妊娠したそうだが、三ヵ年なるけれども、子どもが生まれない。不思議だと思っていたら、三ヵ年後に、人間でなくして、大きな卵を三個生んだそうだ。そのときは、按司といえば、相当の位の人だったから、この津浜按司は世間に恥しく思って、これを畑のフサギラーーこの辺の言葉で、草をたくさん集めて積んでおいたものをフサギラと言って、昔はよくあったがーーその下に卵三個を埋めて、毎朝毎晩行って、様子を見ておったそうだ。しかし、三ヵ月になるけれども、そのままであって、三ヵ月後に、朝早く行ってみたら、その卵から大ぎな男の子が三名できておったそうだ。
「ああ、これは珍しい」と言って、その三名の子どもを家に連れて帰って来て、育てていたそうだ。
そうすると、長男は七つ、次男は五つ、三男は三つぐらいに大きくなった頃から、御飯を三升ずつも食べるようになっておったそうだーー当時は、こっちでは白米はできなかったから、粟の飯だっただろうーーだから、津浜の按司も、その三名の子どもに食わせて養育するのが非常に困難になって、どうしたらいいかと考えておったそうだ。その按司の兄妹(きょうだい)が与那覇(よなは)に嫁入りして行っておったそうだが、その兄妹には子どもがなく、たいへんな富豪だったそうだから、その妹に、
「お前は、そんなに裕福に暮らしているが、子どもがないから、わしの子どもを貰って育てて、お前の子どもにしたらどうか」と聞いたら、喜んで、
「ああそうしてもらったら、ありがたい」と引ぎ受けたそうだ。それで、与那覇の妹が、三名の兄弟全部を養っていたそうだが、もう十(とお)にも余る頃になれば、ますます食べ物の量は増えたらしいな。さすがに富豪な家でも、食わすのに堪えきれなくなっておったそうだ。そのとき、ちょうど来間の島が、千人原と言って、千人の人間が住まっておったそうだが、このヤーマスという御願(うがん)をとりやめたために、天罰で、天から怪物が出て来て、来間の人を全部攫(さら)って、無人島になっておったそうだ。だから、その与那覇のお母さんが、
「今、来間が無人島になっているから、お前たち兄弟三名は、向こうの島に行って、暮らしを立てたらいいだろう。たくさんの土地があるし、粟を作っても、芋を作っても贅沢(ぜいたく)に食べられるから、向こうに行ったほうがいいよ」と相談したら、
「自分らもそれがいい」と賛成してなあ、向二うには、マイヤマと言って、大きな木がたくさんあったそうで、その大きな木を倒してそれで舟を作って、三名、来間の島に渡って来たそうだ。
渡って来て見たら、人家は全滅して、井戸から上がる所に、スムリャーという家だけに、年寄りのお婆さんがおったそうで、兄弟三人、その家に入ったそうだ。したら、お婆さんは、三名の兄弟を怖がって、鍋を被って隠れておったそうだ。家の中を全部調べて、鍋を返して見たら、お婆さんが現われたそうだ。
「なぜ、あんたは、そんなことをしているか」と言ったら、
「いやもう。こっちは、神さまが来て、人を全部攫って行ってるから、今日はわたしの番だと思って、あんたらがわたしを攫いに来たと隠れた」と。
「そんなら、いちいち訳を話してくれ」と言って、お婆さんからいちいち聞いたら、
「まあ、こうこういうふうに、一年に一回やる、大切な御願をとりやめたために、天罰で、こういうふうに全部の人が攫われて、自分ひとりしか残っていない」と話したそうだ。したら、
「その天から来て人を攫う怪物は、何月何日の何時ごろ来ると決まっているかあ」と。「その場所はどこか」
と聞くと、
「パチャの広場に降りて来て、攫って行ってる」とーーパチャと言って、昔の道が段々であるんですよーー。
それを聞いて、兄弟三名、その日のその時間に行って、隠れておったそうだ。ほんとうに、その時間には、天から真直ぐ、なにかが吊されて来て、その怪物はなにかと言えば、大きな牛だったそうだ。そこで、兄弟は、普通の人ではない、力に自信があるから、いちばん先は、三男に、
「お前から行って掛かれ」と言って掛からせたそうだ。したら、三男は、どうしてもかないそうでない。次には次男を出したら次男も、
「どうしてもかなわん」と。
「これは最後に、わしが出なけりゃあいかん」と、長男が出て行って、その牛の角をば二つまで、引ぎ抜いたそうだ。引ぎ抜いたら、牛は、大きな唸り声をあげて、ナガピシという所ーー宮古に通じた干瀬(ぴし)があるよ、浅瀬がーーそこから泣いて行ったそうだ。
その後ーーこっちは、ナガピシは、潮が引いたら陸のように本島まで続いて出るんだよーー兄弟三名、潮が引いてから、ナガピシに行ったそうだ。したら、そのナガピシの間には、舟の通れるような海峡があって、そこから弟の三男が海の底をのぞいて見たら、大きな家があって、その家の門で女の人が、糸を掛けていたそうだ。それを見て三男は、長男と次男を呼んで、
「見てみなさい。珍しいものが海の底に見えている」と。
「行って全部見てみよう」と、三名、海の底に入って行って見たら、海の底は陸みたようにして、龍宮城のように立派な家があって、その女の人は、門番をしておったそうだから、
「おい、あんたの主人に会わせてくれ」と言うたら、
「そうですか。そんなら待ってください。主人に聞いてみますから」と聞いてみたら、主人が、
「通しなさい」と。
「ああ通していいそうですから」と入らせたそうだ。入って見たら、その主人が血まみれになっておって、 「角二つ取られたから、もう自分は命がない」と言ったそうだ、それは神さまであるからして、知っておったそうだ。兄弟三名に、
「あんた方には負けた」と。
「ヤーマス御願を怠ったために、集めた人間はどうなってるか」と。
「いやあ全部こっちにいる」と。
「そんなら。それを返しなさい。わたしらが連れ帰って、来間の島を再建するから」と言うたら、
「ああもう、おそらくそれを連れて行っても役には立たない。全部目の中に鉛を入れてあるから駄目だ」と言うて、「自分が負けた詫(わ)びとして、門番をしている女の人を連れ帰りなさい。あれだけは完全な入間だから」
というふうで、その女の人をこっちに連れて帰ったそうだ。
その女の人を来間に連れ帰って、長男の奥さんにして、その間から生まれた女の子どもを次男が奥さんに、次に長男から生まれた、あとの女の子を三男が奥さんにしたそうだ。ーーこっちのヤーマスのときは、三軒、スムリャープナカ、ウプヤープナカ、ウーマスシャプナカとあって、今日まで御願をするとぎには、その家でやっているわけだよーー。そのようにして、来間の島の千人原が無人になっているときに、再建したのは、この兄弟三名だと。そういうことで、兄弟三名が源(もと)になって、今の来間島は作ってあるという意味だ。そのときから、兄弟三名は、盛んにヤーマス御願をしたそうだ。来間のヤーマス御願のいわれはそれだな。(『沖縄の昔話』)
②沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町来間島~昔、来間島にバーント(鬼)がいて、島民が一人ずつ食い殺されていった。与那覇村の強力の三人兄弟が、この鬼を退治しようとして、島に渡って探していると、一軒の小屋で老婆が泣き悲しんでいるのを見た。訳を聞くと、今晩あたり自分が食い殺されるだろうというので、三人はこれを慰めて、近くの物陰に隠れて鬼の来るのを待った。真夜中ごろ、果して鬼がやってきたので、三人が力を合わせて、これを投げ伏せ、大木に縛り付けた。翌朝見ると、大木は根こそぎ倒れて、鬼の姿は見えず、昨夜の格闘で傷ついたとみえ、血痕が地上に残っていた。三人は、その血痕をたよりに尋ねて行くと、島の東海岸の洞窟内で呻き声が聞こえたので、踏み込んで鬼を退治することができたが、全身真黒で口が耳の下まで裂けていた。これから島内には鬼の危害はなくなり、住民が繁昌したので、祈願祭としてヤーマスプナカを始めるようになった。(『宮古島庶民史』)
③同右~宮古島川満のキサマ按司の娘が、ひとりでに孕み、三年後に三つの大きな卵を生んだ。その三つの卵から三人の男の子が生まれたが、この子どもたちは、たいへんな大飯食らいであった。キサマ按司は、三人の子どもを養い切れないので、それを与那覇のミル豊見親に預けた。そのミル豊見親も養い切れず、三人兄弟を来間島に赴かせた。兄弟が来間島に渡ってみると、その島は一年に一度のたいせつな御願をやめたために、神さまが怒って島人を皆さらってしまい、スムリャーという家に、老婆がただ一人、鍋を被って隠れていた。兄弟は、老婆に悪神の現われる場所を聞き、悪神をナガビシで待つと、悪神は赤牛となって現われた。兄弟が力を合わせて悪神をやっつけ、その牛神の跡を追って海の底を訪ねると、門のところで糸を巻いている娘がいた。その娘の案内で牛神と会うと、牛神は血だらけで、御願を復活してくれるならば、来間島の暮らしを邪魔しないという。兄弟は御願の復活を約束し、さらわれた島人は、すべて目に鉛をつめられて駄目になっていて、その門番の娘だけを連れて帰った。島に戻ると、門番の娘はスムリャーの老婆の家の娘であることが分り、これと長男が結婚して子どもをもうけ、その子どもと次男、三男が結婚して家をおこし、それぞれスムリャーブナカ・ウプヤーブナカ・ウーマスシャブナカとなった。またそれ以来、三人兄弟は、ヤーマス御願(豊年祭)をさかんにおこない、これが今に及んだという。(「沖縄民話の会会報」三号)
④沖縄先島・沖縄県宮古郡下地町与那覇~昔、来間島にファントゥという大男がいて、来間島の人々を全部食ってしまったので、与那覇の部落から力持ちの男が二人、これを退治するために来間島に渡った。ある一軒で泣き声が聞こえるので探してみると、お婆さんが一人台所に薪をかぶって隠れていた。聞くと、今夜はわたしがファントゥに食われる番だというので、二人が待っていると、夜中になると大男のファントゥが現われた。二人は、ファントゥに突進して押さえつけ、屋敷のそばの大木に縛り付けた。翌朝になって再びそこへ行って見ると、大木は引き抜かれてファントゥは見えず、血の跡が点々と続いていた。その血の跡をたどって行くと島の東岸の洞窟に続いており、なかに入ってみると、大男のファントゥが血だらけでのたうち回っていた。そこで二人は、再びファントゥをつかまえ舟に乗せて沖に流した。それで、こんな人食いが島に現われないようにと、シマフサラと言って、動物の骨をシメ縄につるして、さげるようになった。(『ゆがたい』第四集)
コメント以外の目的が急増し、承認後、受け付ける設定に変更致しました。今しばらくお待ち下さい。
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